親指サイズの文房具「キングミニ」誕生 企画会議は紛糾、社長が「面白い」と唸ったアイデアはこうして生まれたキングジムに聞く(2/3 ページ)

» 2022年06月10日 07時00分 公開
[菊地央里子ITmedia]

社長の鶴の一声「面白いと思う。私は好きだな」

 キングジムの新商品企画は、まず課内ミーティング、部内会議という2段階を通過する必要がある。そして、社長を含む役員に向け、企画者が新商品をプレゼンする開発会議が開かれる。そこで承認された企画のみが、製品化にこぎつけるという“狭き門”だ。

 金谷さんが持ち込んだキングミニシリーズは、開発会議で賛否両論を巻き起こしたという。しかし、「面白いと思う。私は好きだな」という社長の一声が後押しした。キングジムが力を入れている、SNS戦略に活用しやすい点も決まり手となり、開発会議を突破。製品化が決定した。

キングミニ キングファイルを収納する保存ボックスの形をした「ミニ保存ボックス」

 しかし、課題は山積みだった。キングジムでは、担当者自身が、商品の企画や開発・設計、量産試作のスケジュールや予算管理、パッケージや配送用ダンボール・注意書きの作成──といった、製品が形となりお客さまに届くまでの全工程を担当する。その中で生まれる課題は、金谷さん自身が全て解決していかなければならなかった。

キングミニ 企画・開発などで生まれた課題は、金谷さん自身で全て解決しなければならなかったという

 多くの課題に直面した金谷さん。中でも2つの大きな苦労があったという。1つ目は、高い技術力がある製造委託先を探すことだ。キングミニシリーズは自社製品のミニチュア化というコンセプトのため、クオリティーの妥協は許されない。クオリティーを維持した上でのミニチュア化には高い技術が求められるため、「製造は難しい」と断られることが多かったという。製造委託先を探すのは難航したが、粘り強い交渉の末、国内でやりとりをしていた製造メーカーから協力を得ることに成功した。

キングミニ 手のひらに載せると、その小ささがよく分かる

 2つ目は、キングジムのどの商品にも付いている、4色のスクエアマークの再現だ。金谷さんは「キングジムの代名詞ともいえるマークです。ミニチュア化しても違和感のないように、サイズの縮尺や色の再現など何度も試作を重ね、細心の注意を払いました」と話す。

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