カンムPoolの驚異の仕組み クレジットなのに事前チャージ、チャージ金額から投資リターン金融ディスラプション(4/4 ページ)

» 2022年06月15日 10時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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後払いプレイヤーにとって調達コスト低減が勝負

 後払いサービスを開始した18年からPoolの検討は始まった。法的なスキームを考案してからも、金融当局への相談を重ねた結果、編み出されたのが今回の仕組みだ。早くから検討を進めたのは、「後払いのような資金繰りが必要なサービスは、調達コストをいかに下げるかの勝負になる」と八巻氏が見ていたからだ。

 実際、海外のBNPL事業者のクラーナ(スウェーデン・ストックホルム)は事業の拡大と併せてスウェーデンで銀行免許を取得している。拡大する後払いサービスにおいては、銀行ライセンスを取得して調達コストを下げることが、重要な局面に来ている。一方で、国内において銀行免許を取得するのは容易ではない。それが、資金決済法と第二種金融商品取引業を組み合わせたPoolの仕組みにつながった。

 従来こうした運転資金は銀行からの貸出によってまかなわれることが多かった。しかし、土地や機械を担保にできる製造業とは違い、銀行はスタートアップへの融資に積極的ではない。かつ債権を担保にできる可能性があるにしても、与信枠が十分でない。カンムのような数億円規模の資金需要に応えるには、どうしても高額な金利や手数料がかかる手段がメインとなっていた。

 ところが、自社でサービスを開発すれば、年利1%の期待リターンを十分に高いと思ってくれるユーザーがたくさん存在する。Poolの事前登録者は6月10日時点で5800人を超えており、1人が平均30万円を投資してくれれば、30%の1740人で5億円以上の投資を集められる可能性があると、八巻氏は考えている。

 Poolでは、ユーザーは投資をしていることの難しさを感じることなく、銀行に貯金しているかのような操作感覚で年利1%のリターンを期待できる投資体験を目指した。もちろん銀行のような預金保険制度もなく、厳しい規制もないため、相応のリスクはある。元本保証や利回り保証ではまったくない。それでも新たな投資体験のモデルとなるかもしれない。

 また銀行もノンバンクも対応しきれていない、フィンテックスタートアップの運転資金需要に応える仕組みになっていく可能性がある。

 一方で、既存の法を組み合わせないと、ユーザーと事業者のニーズに応えられなかったということでもある。既存の金融プレーヤーが対応しきれないニーズが増加しており、新たな法の枠組みも求められる。

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