昼前には完売、整理券を配布 崎陽軒と共同開発した「関西シウマイ弁当」が売れている背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)

» 2022年06月15日 11時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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鉄道ファンに愛される

 まねき食品は1888年(明治21年)創業の老舗だ。姫路駅の近くで茶店「ひさご」を開いていた竹田木八氏が山陽鉄道(現・山陽本線)の開通にあたり、駅弁に進出したのが起源。

 翌89年には姫路駅構内で弁当、お茶の販売を開始。経木の折箱に入れた「幕ノ内弁当」の駅弁を、はじめて製造販売した。つまり、同社が全国にある幕の内弁当の駅弁を生み出した元祖である。

 1949年(昭和24年)、えきそばを開発。姫路駅構内で販売を始めた。終戦後、統制品であった小麦粉の代用としてこんにゃく粉にそば粉を混ぜたそばを販売。その後、試行錯誤を重ねて、かんすい入りの中華麺を和風だしの汁で食べる、独特なスタイルに到達した。

 以来、姫路名物として地元の人々、全国の鉄道ファンに愛されている。

中華麺を使用したユニークな姫路のえきそば

 幕の内弁当の開発と、姫路名物のえきそばによって、鉄道文化に大きく寄与してきたまねき食品。同社は現在「あなごめし」や「但馬牛 牛めし弁当」、地元の食材を集めた幕の内「味づくし」など、十数種類の駅弁を販売。

まねき食品の駅弁ラインアップ

 他にも、えきそばの販売はもちろん、仕出し弁当、穴子めし専門店「たけだの穴子めし」、和食店「竹善」、兵庫県相生市の「道の駅あいおい白龍城」のレストラン「和ダイニングまねき」、神戸市の山陽自動車道淡河PA上り「マネキダイニング」など幅広く外食、中食の事業を手掛けている。

幕の内弁当の駅弁の元祖、まねき食品の現在の幕の内「味づくし」(出所:まねき食品公式Webサイト)
姫路駅前にある穴子めし専門店、まねき食品のたけだの穴子めし

 大阪でも梅田の阪神百貨店と難波の高島屋に駅弁販売店のまねき、阪神百貨店スナックパークにえきそばを出店するなど、関西圏での人気は揺るぎない。

 また、コロナ禍に入ってからは、ネット通販で冷凍駅弁が伸びている。商品としては、北海道の「鮭ホタテめし」、瀬戸内の「せとのかきめし」など、全国6カ所のご当地グルメを冷凍弁当にした「全国旅気分」6種各1食セットが好評。他にも、えきそば4食と駅弁3種各1食がセットになった「姫路のふるさとセット」なども用意している。旅行を控えている人が家で旅行気分を味わえる、多彩な冷凍商品を提案している。

冷凍駅弁の全国旅気分(6食)。北海道の鮭・帆立、東北の牛タン、北陸の蟹、近畿の神戸牛、瀬戸内の牡蠣、九州の明太子・かしわを味わえる(出所:まねき食品公式Webサイト)

 「コロナで非常に厳しい状況にまで追い込まれたが、コロナがなければ関西シウマイ弁当は生まれなかった」と、まねき食品営業第一部長の岩本健司氏はしみじみと語る。関西シウマイ弁当のヒットで、災い転じて福となる流れが生まれている。

 関西には、京都「餃子の王将」の餃子、大阪「551蓬莱」の豚まん、神戸「老祥記」の豚饅頭といったように、各主要都市に名物の点心がある。東西の老舗駅弁業者がタッグを組んだ姫路の関西シウマイも、それらに匹敵するロングセラーとなり、駅弁復興をけん引していくのではないだろうか。

冷凍駅弁の全国旅気分、掛け紙(出所:まねき食品公式Webサイト)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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