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「職務給」導入の最大のハードルは、何か?大切なことは(2/2 ページ)

» 2022年06月15日 09時30分 公開
[川口雅裕INSIGHT NOW!]
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 日本の職能給は、柔軟な人事異動に対応できるよう、何でもそつなくできる人が評価されます。「強みがあること」よりも、「弱みがないこと」が大切であり、人材育成においても弱みを解消することに力が注がれます。評価の観点はその人の職務によらず網羅的で、半年に一度の面談では、上司はその中の弱い部分を改善するよう求めます。要するに、職務給とは対照的な「ウイークネス・ベース」という考え方になっています。もちろん、上司に悪気はありませんが、弱みにばかり目がいっている結果、意欲をそぎ、依存度を高め、余計に弱くしてしまっている可能性もあるかもしれません。

 職務給を導入する企業は今後、増えていくでしょう。会社の指示した通りに、異動や転勤を繰り返さねばならないことが、自分のキャリアや人生設計の支障になると考える人が増えていること、キャリアチェンジを考えると、どこの会社に行っても通用する専門性を身に付けたいと望む人も多くなっていること、外国人や女性を含めて多様な人材の力を生かしにくいことなど、日本的な職能給が時代に合わなくなってきているからです。

 職務給の導入に向けて、業務ごとに職務記述書を細かく作り、報酬も職務に連動するような仕組みにし、正社員制度があるので雇用期間の定めをつくるのは難しいとしても、担当職務に期限を厳格に設定するようにし、研修や人材育成も専門性を磨く方向に変えていく…といった動きが出てくるでしょう。評価制度も、階層別に網羅的に行うのではなく、個別の専門性に焦点を当てるように変わっていくはずです。

 しかし、これらは全て外形的なもの。職務給の“形式”を整えようとするものです。職務給が本当に機能するためには、その本質であるストレングス・ベースに、会社や上司が変われるかどうかにかかっています。長らくウイークネス・ベースの評価、処遇、育成を行ってきたそのパラダイムを、真逆に変えることができるかどうかです。でなければ、「形を整えただけで、何も変わらない」という結果に終わるに違いありません。

 心すべきは、「問題より可能性を、強制ではなく選択を、病気(弱点)よりむしろ健康(強み)を」というチャールズ・ラップ氏の言葉だと思います。(川口 雅裕)

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