なぜスシローは「おとり広告」をやらかしたのか 「また起きる」これだけの理由スピン経済の歩き方(1/7 ページ)

» 2022年06月14日 10時10分 公開
[窪田順生ITmedia]

 熊本産アサリの産地偽装に続いて、今度は「ウニ」に関する“やらかし”が問題になっている。

 まずは、回転寿司チェーン「スシロー」の「おとり広告」だ。2021年9月、テレビCMで「濃厚うに包み」と「新物うに 鮨し人流3種盛り」などを盛んに宣伝していたが、実はほとんどの客はこれらの商品を食べることはできなかった。

濃厚うに包み
新物うに 鮨し人流3種盛り

 「ウニの2商品は発売からわずか5日後の昨年9月13日、既に一時販売中止を決めていたのに、在庫を再確保するめどが立たない間も広告を続けた」(共同通信 6月9日)

 「CMを見て店に行ったのに、いつも売切だった」なんて苦情がSNSで多く寄せられたことを受けて、消費者庁と公正取引委員会が合同で調査をして発覚、6月9日には景品表示法違反による再発防止の措置命令を受けた。「100円でウニが食べられる」という庶民のささやかな夢を踏みにじる行為に怒りの声が多く寄せられた翌10日、追い討ちをかけるように別の“ウニ偽装”が報じられる。

 北海道利尻町は、ふるさと納税の返礼品として「利尻産ウニ」を扱っているが、その協力事業者がロシア産を混ぜていたことを発表したのだ。水産品の偽装といえば、中国から輸入したアサリを、日本の海にバラ巻いたあとに「熊本産」として販売するという「産地ロンダリング」が大きな注目を集めたが、今度は「ブレンドでかさ上げ」というテクニックが登場したわけだ。

 さて、このように相次ぐ“ウニ偽装”を耳にすると、「水産物を扱う業者や企業のモラルが低下しているのではないか」などと感じたかもしれない。また、スシローに関しては「宣伝広告を進める本社と現場の間に“溝”があるのでは」なんて組織の体質を指摘する専門家が多い。

 だが、どちらの不正も根っこをたどっていくと、あるひとつの大きな問題にたどり着く。これによって業者のモラルが壊れている。この問題が解決されない限り、似たような不正が「また起きる」のではないか。

 それは、「水産資源の不足」だ。

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