なぜスシローは「おとり広告」をやらかしたのか 「また起きる」これだけの理由スピン経済の歩き方(5/7 ページ)

» 2022年06月14日 10時10分 公開
[窪田順生ITmedia]

最後に残るのは「足りない」問題

 これは利尻産ウニの産地偽装も全く同じだ。実はこの事業者が不正に走ったのは、今年1月の出荷分からだった。冷凍ウニ約3000件のうち、約400件にロシア産ウニをブレンドし始める。では、このタイミングに一体何があったのか。報道によれば、「2021年12月に欠品に関するクレーム寄せられた」(日本経済新聞 22年6月11日)という。

ウニが不足している(出典:ゲッティイメージズ)

 昨年、北海道のウニは壊滅的な被害を受けていたが、それは主に日高沖から根室沖にかけての太平洋沿岸で利尻島のあたりではない。では、なぜ「足りない」状況に陥ってしまったのかというと、注文が4倍にはねあがったからである。

 「同社のウニは、20年度の約3000件から、昨年度は1万2千件に増加していた」(同上)

 わずか1年でこんなに爆発的に増えれば、供給体制がパンクするのも当然だろう。しかし、ふるさと納税の返礼品なので今さら「足りない」とは言えない。そこでこっそりとロシア産を混ぜて「かさ上げ」をしようと考えたのかもしれない。

 いずれにせよ、こちらもスシローと本質は同じだ。ふるさと納税の協力事業者としてノーと言えなかったとか、仕入れの量が足りていなかったけれど、どうしても1万2000件の冷凍ウニをさばかなければいけなかったなど、この事業者にも事情があったのだろう。

 しかし、そういう細かな情報を削ぎ落としていけば、最後に残るのは「足りないという現実が受け入れられなかった」ことに尽きるのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.