で、これもまた「カニといえば北海道や北陸もあるじゃないか」となるが、例えば石川のカニは「21年11月〜22年3月後半までの漁獲量は、比較できる統計をとり始めた00年以降、過去最低だった。価格は前年同期と比べ5割上昇し、過去最高値だった」(日経産業新聞 22年4月20日)そうで、こちらも輸入ガニにつられる形で高騰しているのだ。
つまり、スシローがウニやカニのフェアをすると大々的にCMを流していたとき、日本は回転寿司で100円均一のウニやら、安いカニを大量に用意できるような状況ではなかったということなのだ。
だが、残念ながらスシローはCMを中止したり、差し替えたりすることができなかった。マーケティングの年間スケジュールがビタッとフィックスしていて、そんなことをしたら誰かのクビが飛ぶような責任問題に発展してたとか、いろいろな社内事情はあるだろう。だが、突き詰めていけば、「足りない」という現実を真摯(しんし)に受け入れられなかったということなのだ。
集客力のあるウニやカニが「足りない」ことを明かしてしまうと、当初見込んでいた客がやって来ない。ということは、数値目標も達成できない。ならば、わざわざCMを中止にしなくても……という方向へ流れてしまうのもよく分かる。
組織内で生きる人たちからすれば、「ウニやカニを用意していた事実もあるのだから、別にウソをついているわけではない」「たまたま品切れしているだけ」などというロジックで、なんとなく自己正当化ができてしまう。
「足りない」を「足りている」にねじ曲げるには、キレイ事だけでは済まないというわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング