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丸亀製麺が「店舗のない丸亀市」で地方創生に取り組む真意 トリドール粟田社長に聞く過去最高の営業利益(1/3 ページ)

» 2022年06月17日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

 コロナ禍で苦戦する飲食業界で好調なのが、「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングス(以下、トリドールHD)だ。

 テークアウトの「丸亀うどん弁当」のヒットなどにより、2022年3月期の連結決算では売上収益1534億円と、1500億円を突破。前年比で186億円増と大幅な増収を果たした。54億円の事業利益に、時短営業の協力金などの政府補助金129億円も加わり、過去最高となる142億円の営業利益と、89億円の当期利益を計上している。

「丸亀うどん弁当」は2000万食を突破(プレスリリースより)

 好調のトリドールHDは4月13日、丸亀市と地域活性化包括連携協定を締結した。新たな地方創生を実現する「共創型地方創生」に取り組むもので、丸亀市への支援は産業振興から市民の安全安心、健康づくりなど多岐にわたる。すでに10年以上実施されている取り組みも多く、協定締結によってさらに強化する方針だ。

 ただ、「丸亀製麺」は「丸亀」の名前をつけているものの、丸亀市には1店舗も置いていない。丸亀市との連携は、商売につなげることが目標ではなく、あくまでCSR活動の一環だ。自身も丸亀市の文化観光大使を務めるトリドールHDの粟田貴也社長兼CEOに、丸亀市と協定を締結した真意を聞いた。

粟田貴也(あわた・たかや) トリドールホールディングス社長兼CEO。1985年に焼鳥屋のトリドール三番館を開業。1990年有限会社トリドールコーポレーション設立、代表取締役社長。1995年10月、株式会社トリドール(現・株式会社トリドールホールディングス)へ組織変更、代表取締役社長

丸亀市と包括連携協定を締結

 トリドールHDと丸亀市の包括連携協定の調印式が、東京都内のトリドールHDオフィスで開かれた。粟田社長兼CEOと松永恭二丸亀市長が、国内シェア9割を占める丸亀市の特産品「丸亀うちわ」にそれぞれ署名し、協定が締結された。

 今回の協定は「共創型地方創生」のテーマのもと、自治体と企業の連携に留まらず、市民サービスの向上や、地域外から訪れる第三者との交流からイノベーションを生みだすことなども目指している。その分野は、産業、観光、芸術、文化、スポーツの振興から、食育、健康づくり、子育てや高齢者支援まで幅広い。

 丸亀市の人口は約11万人で、丸亀城の城下町を中心に、北側には穏やかな瀬戸内海、市の南部にはのどかな田園地帯が広がる地方都市だ。

 丸亀市とトリドールHDの関係は、10年以上前から構築されてきた。2011年には粟田社長兼CEOが丸亀市の文化観光大使に就任。丸亀製麺の店舗に観光ポスターを掲示するなど、丸亀市の宣伝に取り組んできたほか、丸亀城の石垣修復事業や福祉関連事業への寄付、子ども食堂なども支援している。

 さらに3月からは市内の離島の1つで、高齢化が進んでいる讃岐広島にトリドールHDの社員が移住した。日本遺産に認定されている「尾上邸」をリノベーションするほか、島の活性化などに取り組んでいる。調印式で松永市長はトリドールHDに感謝の言葉を述べた。

 「丸亀市にとってトリドールHDは市を良くするためにお力を貸してくださる頼れる存在です。丸亀市の名前を全国に広めてくれたのも、間違いなく丸亀製麺さんでした。今回の協定を機に、トリドールHDさま、丸亀製麺さま、そして丸亀市がさらに発展、活性化していきますよう、さまざまな活動を展開してまいりたいと考えております」

トリドールHDと丸亀市の包括連携協定の調印式(プレスリリースより)
鶏ももから揚げうどん弁当
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