絵のテーマは毎回、季節に合わせた風景を駅係員たちで話し合って決めている。展示の頻度は不定期で、これまでに8作品(うちチョークアートは4作品)を手掛けてきた。
これまでに特に反響が大きかったのが、神奈川県屈指の紅葉スポット、丹沢大山国定公園にそびえる大山を描いた作品。ホワイトボード一面をモミジやイチョウのカラフルな色彩で埋め、疫病封じの伝説が伝わる妖怪「アマビエ」も登場させて「コロナに負けるな」との願いを込めた。
「展示終了後には『次はいつやるのですか。ぜひまた絵が見たいです』との声を多くいただきました」と作品を描いた駅係員はコメントする。
小田急電鉄によると、相模大野駅の1日平均乗降人員は8万7835人(2020年度)。新型コロナウイルス感染拡大を受け、前年の12万7169人から30.9%減となり、他の駅同様にコロナ禍の影響を大きく受けている。
コロナ禍で客足が減り、利用客の気持ちもふさがる中で、何か明るい話題を提供できないかーー。そんな思いから始まったのが駅係員の手作りによるチョークアートだった。
展示を始めてから、駅係員たちは構内の様子の変化に気づいたという。
それまでは、乗り換えなどで足早に改札やコンコースを通過していた利用者が足を止めて作品を眺めたり、子どもを連れた利用者が絵と一緒に写真撮影したりする光景をよく見かけるようになったという。「われわれ駅係員もとても心が和んでいます」と担当者はコメントする。
今となっては、知る人ぞ知るアートスポットとして、次の作品を心待ちにする人も大勢いる相模大野駅のチョークアート。コロナ禍で客足が減った駅構内に、人々の笑顔を呼び戻した駅係員たちの創意工夫は、何でもない駅ナカ通路を、人が集まる観光スポットに変身させる可能性さえ秘めている。
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