現在のリアル店舗の在り方という視点からみて、今回紹介した2店舗に通じた点は、店舗に出向かないと体感出来ない空間や商品の質感があるといったところ。それは単に「体感型」と区分されるような感覚ではなく、「人」を中心に捉えた企業姿勢に通ずるものな気がする。
UPIは、6月に北海道足寄(あしょろ)町に「UPIオンネトー」をオープン。あしょろ観光協会運営の野営場に隣接する形で、物販以外に野営場の受付、観光案内、シャワー設備、軽飲食の提供、アウトドア用品のレンタルなどを行い、近隣アウトドア・アクティビティーの活動拠点となっている。
この施設をオープンするきっかけとなったのも、18年にUPIが現地で開催したアウトドア・イベントだ。足寄の町と人とのつながりによって誕生した。
Onは、テニス選手のロジャー・フェデラーをシニアチームのメンバーに迎え、フェデラー選手と開発した商品を展開。ツアー通算歴代最多111勝を記録し、史上最強のテニスプレイヤーとの呼び声を高いフェデラー選手は、Onに投資家及びアドバイザーとして参画。そのきっかけもOn商品の愛好がきっかけとなったというのだから、「人」とのつながりを感じる。
約3年間のコロナ禍によってインターネットの便利さや、さらなる進化の可能性を見てきた。現在、コロナは収束し始め、元通りの生活を取り戻しつつある中で、今まで味わえなかった自然との触れ合いや人との直接的なコミュニケーションが感じられる価値観を再認識する――。今、求められているリアル店舗の在り方のひとつといっても良いだろう。
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング