欧州に対し、日本のJリーグへのコロナ禍による影響はどうでしょうか。欧州主要リーグ(イタリア・イングランド・ドイツ・スペイン・フランスのいわゆる「5大リーグ」)が毎年8月頃から翌年の5月頃まで年をまたいでリーグ戦が開催されるのに対し、Jリーグは2月から同年12月まで開催されるため、時期が異なります。
検証には、Jリーグが公式に発表している「クラブ経営情報」の中から、19年度(20年7月30日発表)と20年度(21年7月29日発表)を比較に使いました。
19年度のリーグ全体の営業収益(売上高)は1325億円で過去最高を記録(成長率105.4%)。9年連続の増収でした。クラブ別で見ると、元スペイン代表のイニエスタ選手や日本代表経験者の相次ぐ加入で話題となったヴィッセル神戸が、Jリーグ史上最高益となる114億円(前年度比118%増)を記録しました。100億円超えはJクラブとして初の偉業です。
ヴィッセル神戸だけでなく、全54クラブ(当時)中、35クラブが前年度比100%以上の成長率を記録し、うち3クラブ(琉球・大分・鹿児島)は160%以上の増益となりました。
内訳は、全体の48%を「スポンサー収入」(640億円)が占め、次点が「入場料収入」(16%・216億円)となりました。
新型コロナの感染拡大で開幕直後にリーグ戦が中断するなどの影響があった20年度シーズンの状況はどうでしょうか。20年度のリーグ全体の売上高は全56クラブで1095億円。J加盟クラブ数が前年度と異なる(19年度は54クラブ)ものの、数値だけ見れば前年度比2割減となる、230億円の減収となり、毎年更新していた増収記録も9年連続でストップしました。
収益の内訳を見てみましょう。リーグ戦の中断に加え、無観客試合などもあり、入場料収入は84億円(前年度比6割減)と、甚大なダメージを受けたことが分かります。一方で、スポンサー収入は590億円(同1割減)となり、意外にも大きな減収にはなりませんでした。スポンサー収入がさらに減少していれば、リーグ全体の収益も1000億円割れになった可能性もあり、辛うじて踏みとどまった形です。
ただ、クラブ別に見ると単年度赤字を記録したクラブ数が、19年度の23クラブから35クラブに急増。顔ぶれを見ると、川崎フロンターレや鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、浦和レッズなどJ1の人気クラブも赤字に転落しました。
Jリーグは「(最上位カテゴリーである)J1(1部)の営業収益の減少幅が大きく、上位クラブほど減少幅も大きい」としています。
前年度と比較した売上高推移でも、19年度は増収35クラブ、減収18クラブだったのに対し、20年度は増収13クラブ、減収41クラブとなり、J1だけでなく、リーグ全体で各クラブが苦境に立たされたことがうかがえます。
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