東京都が新型コロナの警戒レベルを4段階中、下から2番目に引き下げるなど日本国内での新型コロナの陽性者数が減少傾向にあります。これに加え、熱中症リスクが高まっているとして、厚生労働省が屋外でのマスク着用を「不要」とする注意喚起を出すなど、日本国内で新型コロナへの警戒感が薄れつつあります。
欧州も同様で、サッカーの試合では、既に声出し応援が解禁されています。5月末に開催された、欧州最強のサッカークラブを決める「UEFAチャンピオンズリーグ」(欧州CL)の決勝では、声出し応援に加え、3季ぶりに観客動員数の制限も解除され、観客たちが世界最高峰のプレーに酔いしれました。
「Beforeコロナ」と「Afterコロナ」という言葉があるように、国内外で新型コロナへの警戒感が薄れ、コロナ前同様の生活に移行する一方で、コロナ禍が与えた影響というものが改めて浮き彫りになっています。コロナ禍では各種イベントが軒並み中止・無期限休止となりました。
その後、徐々に状況は改善しましたが、感染防止のため、多くに観客動員数の制限が課されました。スポーツもその例外ではなく、21年7月下旬に開催された東京五輪が無観客開催となったのを筆頭に、Jリーグも有観客開催までに時間を要した上、多くのクラブが入場料収入を断たれ、苦境に陥りました。
そこで今回はコロナ禍直前の2018-19シーズンと、コロナの影響をフルに受けた2020-21シーズンの日欧主要クラブの経営状況を比較し、新型コロナがサッカークラブの経営にどのような影響を与えたのか、見ていきましょう。
検証には、英デロイトが毎年発行している、欧州主要クラブの経営状況をまとめた「フットボールマネーリーグ」(FML)を使いました。内容を見ると、残念ながら、2年以上経過しても「Afterコロナ」時代の到来はならず、苦境が続いていることが分かります。
2020-21年の上位20チーム総収入は、ピーク時の2018-19シーズン比で、約11億ユーロ(約1500億円)も下がっています。このネガティブな影響は、右肩上がりだった欧州サッカービジネスにも厳しい現実を突き付けており、欧州トップ20クラブの収入規模は、コロナ前どころか、約5年前のレベルにまで落ち込んでいます。
実に、1チーム当たり平均で75億円の減収です。コロナ前の欧州サッカービジネスのピーク時である2018-19シーズンにサッカー史以来の最高益を達成したバルセロナ(スペイン)の年商は8億4000万ユーロ(約1200億円)でした。サッカークラブは、選手、監督コーチ、スタジアム、練習施設など投資がかさむビジネスで利益率の低いビジネスですので、年間100億円近い減収は、クラブの存続にもかかわる一大事なのです。
特に、観客の収容制限導入で、スタジアム観戦に来るファン・サポーターが減少したため、試合当日のマッチデー収入(チケット・飲食・グッズ売上)は激減。25年の歴史を誇るFML発行以来、過去最低のマッチデー収益となっています。
特に、バルセロナのように、コロナ前のマッチデー収入が225億円を超えていた巨大クラブへの影響は非常に大きいです。
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