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「Web3.0はうちじゃ無理なの?」 日本企業の多くが頭を抱えている“超現実的”な理由ネックはどこに?(4/4 ページ)

» 2022年06月30日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]
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コカ・コーラ

 21年7月米国アトランタ発にて「コカ・コーラ」初のNFTのコレクターズアイテムを制作しました。

 販売されたNFTは1950年代に活躍したクラシックタイプのコカ・コーラの自動販売機を、メタバース(仮想空間)上で表現したものです。大手マーケットプレース「OpenSea」でオークションを実施し、約6200万円で落札されました。販売収益は全額寄付されたのでこれは収益を目的としたものではなく、コカ・コーラブランドの体験を通じたブランディングを目的としていたことがうかがえます。

マッカラン

 21年10月、ウイスキーのマッカランが1991年物の樽のNFTを発売し、230万ドル(約2億6000万円)で落札されました。落札された樽のNFTには、クリプトアーティストであるトレバー・ジョーンズ(Trevor Jones)氏のデジタルアートが付いていました。これは新たな収益創出とブランディングを目的としていたことが考えられます。

サッポロビール

 21年11月「サッポロ SORACHI 1984」のブランドトークンを発行しました。従来のポイントとしての割引サービスの役割に加え、NFTが付与された独自コンテンツや体験と引き換えられるのが特徴です。ユーザー間でのギフトや交換によるコミュニティー拡大、ブランド同士のコラボレーションを可能にするモデルです。同じターゲットであるが、競合ではない異業種のブランドとの連携をする可能性も秘めており、顧客エンゲージメント強化という効果が期待されます。

ウォルマート

 22年1月、独自の仮想通貨とNFT発行準備に入ったことが米特許庁への商標登録出願で明らかになりました。

 しかし準備に入ったことが分かったのみで、どのような内容を構想しているかは現段階では明らかになっていません。独自の仮想通貨を発行するということは、前述した目的の中でトークン経済圏を確立する方向にあることが予想されます。

 筆者は、次のような新たな経済圏を構想しているのではないかと考えます。

 これを日本企業に置き換えれば、ある企業の仮想通貨によってその企業グループのみならず、他の業種の企業との経済活動においても同じ仮想通貨が利用できます。また、ポイント機能や特別な体験が得られるだけでなく、その仮想通貨の価値が上がると自分の収益にもなるという世界が実現します。

 大手企業各社はこのポジションを他社に取られることを恐れ、自社もそのポジションの一社になるしかないと戦々恐々としているのです。特にウォルマートのような企業のコインが図のように利用されることが一般的になったとき、最も影響を受けるのが銀行やクレジットカード会社です。代替品の脅威とはまさにこのことを指すのです。

筆者が想像する新たなウォルマート新経済圏(出所:筆者作成)

 投機的な観点だけでWeb3.0が展開されると、限られた層の中で収束してしまいます。新たな楽しさや利便性を実現するアイデアや企画があってこそビジネスの意義が高まっていきます。

 Web3.0のビジネスにはさまざまなステークホルダーが存在します。ITベンチャー、投資家、一般企業、XR系デザイナー、デジタルアーティスト、行政機関、ゲーム開発者、マーケットプレース、既存プラットフォーマーなど多岐に渡ります。

 企画・アイデアにより、どのプレーヤーが関わるかは変動します。ただ、その際に必ずおさえるべきことは、自社の収益だけではなく、関わるステークホルダーの視点で収益性やメリットを明確にすることです。そうでないと、間違いなく絵に描いた餅となります。

 自分たちの思惑と関わる企業の事情がうまく連携しない限り、どこかでパズルのピースがそろわなくなるのです。

 法的整備や規制緩和、スマートグラスの開発などが市場を切り開く要因であることに相違ありません。しかし、同時に、多くの企業が取り組みを加速するように、企業の経営課題解決視点でアイデアを付加していくことが並行して必要になります。

 バーチャルとリアルがつながることも市場が飛躍的に広まるきっかけのひとつです。バーチャル上で多くの商品(リアル)が購入できる、リアルな店舗でバーチャルも同時に体験できる、そのような融合した世界がすぐ近くまで迫っています。

 今回はWeb3.0における企業視点の重要性についてお伝えいたしました。

 最後までお読み頂きありがとうございました。

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