欧米で「Katsuブーム」が起きているのに、日本のカツ専門チェーンが進出しないワケスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2022年07月12日 08時57分 公開
[窪田順生ITmedia]

欧米で「Katsuブーム」

 今や「カツ」が世界から称賛される日本の食文化というのは常識であって、串カツ田中がそれをとっかかりに海外進出するなんて話を聞いても、「ま、当然だよね」くらいの反応なのではないか。

 ただ、そういう認識をもって欧米の「Katsuブーム」を眺めていると、ちょっとモヤモヤする事実に突き当たる。

串カツ田中ホールディングスが米国に進出

 実はこれほど「日本のKatsuは最高だね!」と称賛してくれる人が多い欧米には、なぜかほとんど日本のカツ専門チェーンは進出していないのである。

 例えば、1966年(昭和41)創業で国内外で500店舗以上(デリカ形態含む)を展開する「とんかつ新宿さぼてん」を運営するグリーンハウスフーズは、2001年韓国ソウルに「とんかつ新宿さぼてん」をオープンして以来、同ブランドを中心に11の地域で102店舗(22年3月)を展開しているが、韓国、台湾、中国などアジアが中心だ。12年にカナダに「とんかつ新宿さぼてん」が初上陸して現在は2店舗になったが、米国本土や欧州にまでは進出していない。

 国内499店を展開する「とんかつ かつや」も海外で64店舗(21年12月時点)を展開しているが、タイ、台湾、香港などで欧米には未進出だ。

 1958年(昭和33)創業、北海道から西日本まで255店舗(22年1月時点)を展開する老舗「とんかつ和幸」は08年に中国、15年にタイに進出して現在、海外で10店舗を展開しているが、やはりそこには米国や欧州はない。

 また「カツサンド」が人気の「とんかつ まい泉」も12年、「タイへの出店を足掛かりに、その後フィリピン、台湾と海外店舗を展開」(Webサイト)ということだが、他地域への進出したという話は聞かない。

 繰り返しになるが今、欧米では数年前から「Katsu」が、「Sushi」「Ramen」に並ぶ人気の日本食として市民権を獲得しつつある。そのような状況を考えれば、日本やアジアでこれだけの実績のある「かつ専門店」がこぞって米国や欧州に進出していてもおかしくないのにそうなっていない。

 むしろ、「カツ」を冠する大手チェーンの中で、米国本土へ乗り込んだのは今回の串カツ田中が初めてくらいなのだ。なぜこんな不思議なことになるのか。

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