欧米で「Katsuブーム」が起きているのに、日本のカツ専門チェーンが進出しないワケスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2022年07月12日 08時57分 公開
[窪田順生ITmedia]
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海外進出が進まない理由

 しかし、日本の外食チェーンは自分たちの「味」が評価されていると勘違いをして、日本国内で評価されているメニューや味をそのまま持っていって勝負をしてしまう。もちろん、それがウケることもあるが、「なんか違う」と思われてしまうことも少なくない。

 実はこれが日本の外食チェーンの海外進出が思っていたほど進まない、ひとつの原因でもある。実は日本の外食業界は、1960年代から積極的に海外進出をしていた。しかし、成功して現地に定着したのは、ほんのひと握りだった。

 『老舗が続々廃業! 「和菓子店の危機」がここにきて深刻なワケ』の中でも触れたが、「日本の食文化をそのまま海外へ持っていく」というスタイルが多かったからだ。(関連記事

 実際、当時の報道をみても、「日本料理の繊細さ、奥深さは世界一」「味つけさえ少し工夫すれば、外国人もすぐ虜にできる」なんて強気の発言をしている外食関係者の談話が異様に多い。

 その背景には自分たちの良いものを、よその国の人々に押し付ける、という傲慢さがあるような気がする。

 そのような意味では、串カツ田中が米国で仕掛ける「TANAKA」は注目だ。実は串カツ田中は14年に、国内でやっているような業態で米国のロサンゼルスに進出したものの、撤退をした苦い過去がある。

 そこから学習して今度は、日本食イメージを極力抑えて、アメリカで支持されやすいベタな「Katsu sando」を打ち出すことで、リベンジを狙っているようにも見えなくない。

 果たして「TANAKA」は現地のアジア系米国人たちが築き上げてきた「Katsu」という米国食文化の中で埋没することなく、「日本のカツサンド」という強みを発揮できるのか。注目したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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