山根氏はアクセンチュア社内ではメタバースは日常的に活用されていると話す。「8拠点でアジャイル開発をしているが、VRアバターで集まると、リアルに会った感じでディスカッションがはかどる」
なるほど、やはりメタバースの価値を生かすにはVRゴーグルを掛けて利用することが必須なのかもしれない。社名まで変更してメタバースに注力するメタは、買収したオキュラスの技術を発展させながら、VRゴーグルの開発を続けている。その中で1つのマイルストーンとしているのが「ビジュアル・チューリング・テスト」だ。
実際の世界とディスプレイ越しに見た世界を比較し、違いが分からなければこのテストをパスしたことになる。もちろん、現在これをクリアしたVR技術は存在しない。しかしメタバースに楽観的な人は、近い将来、技術の進歩でこれが実現すると考えている。
単なるプレゼン投影以上のものを見せる場合も、メタバースならではの価値が生きるだろう。物理的な製品の発表会をオンラインで行うのは限界がある。でも、例えば自動車の発表会をメタバースで行えば、より理解が深まる可能性はあるだろう。自由な角度から眺めることができるし、車内にも入れる。そしてほかの人の順番を待つ必要もない。もちろん、これが実用になるのはビジュアル・チューリング・テストをクリアしたあとのことだろうけど。
発表会場自体を変えることも、メタバースなら簡単だ。例えば、新しいビルのお披露目を、CADデータを元に高精度でモデリングされたメタバース会場で行うなんてことも考えられる。簡単には現地に行けない、例えば宇宙ステーションとか南極基地とかまだ完成していない建造物とかをメタバースにすれば意味がありそうだ。
さらには「発表会場を模したものではなく、◯年後の世界を経験してみようというようなアンリアルなものも考えられる」と山根氏。
アンリアルというのは、AIが生成した画像や音声のことだ。大ヒットした映画『トップガン・マーヴェリック』では、喉頭がんで声帯を失った俳優の声を、AI技術で復活させた。Instagram上に数多く登場しているバーチャルインフルエンサーはAIが生成したものだが、人間のインフルエンサーを凌ぐ人気だ。中国の「AYAI」はアリババ集団に就職し、「リル・ミケーラ」は300万人のフォロワーを持つ。こうした実物と見分けがつかないバーチャルなものが続々と登場しており、これがメタバース内でリアルタイムに動くようになるのは時間の問題だといわれる。
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