プラスチック問題の解決が求められる消費財メーカーフィデリティ・グローバル・ビュー(3/5 ページ)

» 2022年07月22日 12時00分 公開
[Matthew Jenningsフィデリティ・インターナショナル]
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積極的な目標設定が必要

 当社がエンゲージメントを実施した全企業が、何らかの形でバージンプラスチック使用量の削減を目標としていますが、ユニリーバは、大手消費財メーカーで唯一、バージンプラスチックと再生プラスチック双方の使用量を削減することを目標に掲げています。

 ユニリーバの活動は業界のベストプラクティスだと言えるでしょう。プラスチックを粉砕して粒状にし、新しい製品の原料として使用するメカニカルリサイクル(物理的再生法)の増加や、より複雑なケミカルリサイクルを可能にする技術や戦略も、うまく機能すれば、積極的な取り組みと言えます。しかし長期的には、プラスチックの使用量そのものを減らすことを考えなければなりません。

 2020年の1年間で70万トンのプラスチックを使用したユニリーバは、2025年までに絶対使用量10万トンの削減目標を掲げ、バージンプラスチックについては50%の削減を掲げています。直接比較はできないものの、当社がエンゲージメントを実施している他の企業では、バージンプラスチックの削減目標は5〜33%の範囲にとどまっています。

図表2 : リサイクル可能、再利用可能、堆肥化可能なパッケージの割合 出所:エレン・マッカーサー財団、各社報告書

供給面の課題

 しかし、削減目標の観点においても、再生プラスチックのサプライチェーン問題が課題となっています。

 例えば、清涼飲料水のボトルなどに使用される再生プラスチック素材(rPET)の供給について、多くの企業が課題として挙げています。食品包装など食品グレードの再生プラスチックPCR(ポストコンシュー マーリサイクルプラスチック)は、食品グレードの材料を必要としないファッション業界により購入され、これら再生プラスチックの価格を押し上げています。

 ファッションアイテムは一般的に使用後にリサイクルされないため、リサイクル可能なプラスチックは事実上、サーキュラー・システムから排除されてしまいます。当社のアナリストチームは、ファッション企業とのエンゲージメントで、この問題を提起しています。

 いずれにせよ、企業が自社目標を果たすためには、かなり大規模なリサイクルパートナーが必要となります。当社がエンゲージメントを実施した企業は、目標を設定することで、リサイクル市場を活性化させその生産能力を生み出しています。コカ・コーラの最大級ボトラーとして知られるCCHは、すでにリサイクル工程の内製化を進めており、市場全体が急速に拡大する兆しをみせています。

 回収とリサイクルを義務化するために重要な役割を果たすのが政府です。しかし、過去2年間の新型コロナなどの影響もあり、政府の動きは鈍いままです。

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