“壮大なるチェス盤”の再構築と高まるスタグフレーションリスクフィデリティ・グローバル・ビュー(1/4 ページ)

» 2022年05月27日 10時20分 公開
[Andrew McCafferyフィデリティ・インターナショナル]
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 ロシアとウクライナの戦争は、経済的にも、地政学的にも世界の秩序(あるいは、壮大なチェス盤、The Grand Chessboard*1)を劇的に再定義することになりそうです。短期的には、ロシアの軍事侵攻と制裁による貿易面、金融面でのショックが世界的なインフレ圧力の上昇につながっています。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

*1 壮大なチェス盤(The Grand Chessboard):冷戦期のユーラシアの政治力学を説明するため、ポーランド系米国人政治学者で米大統領の顧問を務めたズビグニュー・ブレジンスキー氏が提唱した理論。


 経済成長や全体的な信頼感への打撃は大きくなる可能性が高いものの、その規模や期間には、なお不透明感が根強いです。欧州は最も大きな影響を受ける地域であり、少なくとも小幅な景気後退に陥る可能性が高いと言えます。一方で、今のところ米国への影響は比較的限られています。しかし、戦争によるインフレ圧力の高まりは、避けられないでしょう。

 エネルギーと資源の相互依存関係はすでに変化しつつあります。それは、数年に及ぶ世界規模での調整になることは間違いなく、さまざまな資産クラスに影響が及ぶと見ています。

 フィデリティでは、足元の4〜6月期(第2四半期)は3つのテーマに焦点が当たると見込んでいます。

ウクライナ戦争の時間軸が世界経済の先行きを左右

 ウクライナ戦争は、すでに経済に対して甚大なダメージを与えています。この戦争がどう進展するかは、欧州を中心とした当面の世界経済の見通しを大きく左右するでしょう。解決に向けたプロセスや貿易面での混乱の緩和などが、7〜9月期(第3四半期)以降を見通す上での鍵になります。

 一方で、当面はエネルギー価格が落ち着きを取り戻し、サプライチェーン(供給網)の混乱が収まるという期待もしにくいでしょう。これらは引き続き経済成長の足かせとなり、すでに高いインフレ率をさらに押し上げる要因になると見ています。

 政策当局と市場参加者にとって、この構図は非常に複雑に映ります。市場はまだ、極端なテールリスクを含む、あらゆる可能性と起こり得る結果のすべてを織り込んではいないと考えています。そのため、私たちは、変化に対応できる敏捷性を持ちつつ、適切なリスク回避の手段も活用するよう提案します。

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