“壮大なるチェス盤”の再構築と高まるスタグフレーションリスクフィデリティ・グローバル・ビュー(2/4 ページ)

» 2022年05月27日 10時20分 公開
[Andrew McCafferyフィデリティ・インターナショナル]
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ボルカー主義の再来

 4〜6月期(第2四半期)、そして2022年を通じた2つ目の重要なテーマは、新たな地政学的、経済的な背景の下でインフレ抑制に取り組む必要があるという、中央銀行が直面している課題です。3つの主要な先進国・地域の中央銀行は、タカ派的な姿勢に転換しています。

 米国では、米連邦準備制度理事会(FRB)が1980年代にインフレを抑えたボルカー元議長を彷彿とさせる姿勢を鮮明にし、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切りました。私たちは、FRBが利上げを前倒しし、欧州中央銀行(ECB)もタカ派的な姿勢を続けると見込んでいます。しかし、戦争による経済成長へのショックに加え、実質金利のマイナスも維持する必要があることから、年央までにはハト派的な姿勢に傾くと考えています。

 これらのことを踏まえると、先進国市場のリスク資産にとって、足元の第2四半期は厳しいものとなるでしょう。私たちは欧州での景気後退を前提に、先進国市場がスタグフレーションに陥る可能性が高いことを想定したポジションの構築を推奨しています。現時点では、リスク資産に対する慎重な見方が必要です。

2008年とは異なる状況ではあるものの、中国がアウトパフォームする可能性

 先進国市場の厳しい状況が見込まれる中、中国市場は有望な分散投資先になる可能性があります。この地域は、地理的にも、経済的にも今回の戦争からは遠く離れています。加えて、さらなる金融緩和、財政出動の余地もあり、バリュエーションなどで見た投資妙味が大きいと考えています。

 ただし、不確実性は高いと言えます。中国の政策目標は、デレバレッジ(過剰債務の削減)、不動産セクターの改革、サステナブル(持続可能)な経済成長に重点を置いています。この点で、現在の見通しは世界的な金融危機のさなかにあった2008年よりも複雑で、一筋縄ではいかないでしょう。(4兆元の大型景気刺激策で世界経済を下支えした)当時のように、財政政策によって世界経済をスタグフレーションの軌道から脱却させた「財政プット」の役割を再び果たすことはないと考えています。

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