“壮大なるチェス盤”の再構築と高まるスタグフレーションリスクフィデリティ・グローバル・ビュー(3/4 ページ)

» 2022年05月27日 10時20分 公開
[Andrew McCafferyフィデリティ・インターナショナル]
fidelity

重要テーマと各資産クラスへの影響

ソリューション&マルチ・アセット

 世界経済を巡る不透明感を踏まえ、現在はクレジットと株式の両方をアンダーウェイトとしています。特に、欧州が景気後退に陥る可能性を考え、欧州株式と通貨ユーロに対しては慎重に見ています。

 分散投資先としての需要やコモディティ輸出国として受ける恩恵などを考慮すると、新興国株式(中国を含む)、アジア・太平洋株式(日本を除く)、厳選した新興国通貨については、よりポジティブな見方を持っています。最後に、私たちは米ドルに対しても強気です。FRBがインフレへの対応に注力する間は、金利差がドルの支援材料になると見ています。また、経済環境の悪化など状況が変化した場合は、そのディフェンシブ性も下値を支えると考えています。

株式

 地政学リスクが高まり、スタグフレーションへの懸念も根強い中、業種でなくクオリティの高い個別銘柄に注目することが投資先を選別する最良のアプローチであると考えています。価格決定力があり、しっかりと利益を確保できる企業の株式であれば、足元のような状況でも比較的堅調なリターンが期待できるでしょう。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は最悪期を過ぎ、企業のバランスシートは改善に向かっているため、株式はなお、インカム収入の大きな源泉であると見ています。

 欧州の景気後退リスクを考慮し、欧州株式は慎重に見ています。しかし、コモディティ価格の上昇で恩恵を受けるいくつかの新興国市場は、分散投資のチャンスがあると考えています。中国の一部の銘柄は割安に見えますが、ボラティリティはとても高く、テールリスクも大きくなっています。

債券

 スタグフレーションは難しい問題ですが、債券の中には、金利の上昇や経済成長の減速の影響を受けにくいものもあります。物価連動債はインフレ期待の高まりを前提に、比較的良好なパフォーマンスが見込めるでしょう。私たちはまた、ディフェンシブ性とバリュエーションの改善を理由に、ユーロ圏の投資適格債券についても、建設的な見方を持っています。

 債券投資家はデュレーションを警戒すべきではありません。私たちは、債務の借り換え制約や中央銀行の対応、安全資産への需要などを理由に、名目利回りの上昇には歯止めが掛かると考えています。また、ECBは3月にタカ派的な姿勢を打ち出しましたが、2022年に利上げに踏み切る可能性は低そうで、欧州主要国のデュレーションには投資妙味があると見ています。一方で、中国に対しては、より慎重になる必要があります。不動産市場の動向は依然として懸念材料であり、ボラティリティの上昇が見込まれるためです。

プライベート市場

 ウクライナ戦争によるポートフォリオへの直接的な影響は、今のところ限られています。市場が持ち直し、大きな価格変動はほとんどありません。しかし、戦争によるサプライチェーンの混乱は間接的なものも含めて広範に及んでいるため、しばらくは慎重に投資先を選別する必要があるでしょう。

 プライベート・クレジットは変動金利のため、インフレヘッジに有効です。資本構造において、弁済順位が高いシニアのポジションにあるため、ボラティリティが低く、高いインカム収入が得られます。私たちが現在注目しているのは、キャッシュフローと利益がさらなる減少圧力にさらされても耐えられる企業です。

不動産

 不動産市場を取り巻く最大のリスクは、経済成長の減速です。この危機に対し、市場や市場参加者はまだ対応できていないと考えており、注意を払っています。私たちは、既存のテナントのリスクが高まっていないかどうか注視し、新規に入居予定のテナントについても、精査しています。

 スタグフレーションも懸念点です。不動産は一般的に短期的なインフレに強く、長期的にわたるスタグフレーションには弱いとされています。そのため、私たちはヘルスケア、住宅、データセンターといった、長期的な成長が期待できるテーマに注目しています。また、インフレ対策として有効な投資先として、インフレ連動リースにも関心を持っています。

© フィデリティ投信株式会社 All Rights Reserved.