また、さまざまな技術的・化学的解決策の進展も欠かせません。コルゲートは昨年、初のリサイクル可能な歯磨きチューブの発売を開始し、再加工が難しかったアルミ箔などで作られるラミネートチューブを廃止しました。ここで注目したいのは、同社がこの技術革新を競合他社と共有したことです。当社はこの動きを称賛し、他社にも追随を促しています。
一方、クッキー菓子「オレオ」メーカーのモンデリーズは、柔らかく薄いパッケージを使用しているため、他社に遅れをとっています。このパッケージは、コカ・コーラのボトルやアイスクリームのタブ型容器のようにはリサイクルできないのです。現在、パッケージに使用されている17種類のプラスチックのうち、大規模にリサイクル可能なものは5種類に過ぎないため、まだまだ長い道のりです。進歩とは、技術革新と、そして製品がどのようにどこで、販売され使用されるかの、幅広い変化によりもたらされます。
EMFグローバル・コミットメントの署名企業ではないものの、世界最大の日用消費財(FMCG)グループ、プロクター・アンド・ギャンブルは、サーキュラービジネスモデルを確立するために、製品パッケージに関する目標を設定し、実現に向けた周到なアプローチをとっています。
同社は、ケミカルリサイクルやパッケージのデジタルウォーターマーク(電子透かし)技術など、最も有望な技術的解決策の開発に取り組んでおり、「分子」リサイクルでは特殊素材メーカーのイーストマン (Eastman)と提携しています。ケミカルリサイクルのほとんどはまだ研究開発段階で実現可能性は十分に実証されていません。しかし、現時点ではリサイクル不可能な製品もリサイクルできる可能性があり、メカニカルリサイクルでは不可能とされていた、クローズドループリサイクル(注)を生み出す可能性を秘めています。
注:クローズドループリサイクルは、材料の持つ本来性質を損なうことがない形で同じ素材の原料として無限にリサイクルされる手法。
最近の氷床コアの調査によると、南・北極で極小のナノプラスチック汚染が初めて検出されたことが分かっています(注)。ナノ粒子よりもサイズが大きいマイクロプラスチックは、食品や海水、廃水、淡水などに遍在し、人体にどのような影響を及ぼすか、まだ明らかになっていません。海には2億トンものプラス チックが漂流・漂着し、埋立地にはさらに数10億トンものプラスチックが廃棄されています。現在のペースでいくと、人類は今後10年間のうちに20世紀全体よりも多くのプラスチックを使用することになります。
注:Utrecht University study, 2021
今年3月、約200カ国が、プラスチックのライフサイクル全般で、サーキュラーエコノミーへの移行を加速することを目的として、国連の国際条約を策定していくことに合意しました。これはフィデリティ・インターナショナルを含む世界的な企業連合が、石油・化学メーカーの猛反発を受けながらも、数カ月間にわ たってロビー活動を行ったことによるものです。今後2年間のうちに打ち出される条約の詳細は、政策レベルでも企業レベルでも進展を後押しすると考えられます。
しかし、プラスチックが生物多様性や自然に与える甚大な被害を食い止めるには、かつて米国のフォード・モデルT(T型フォード)が自動車産業に果たしたような、気候変動危機に柔軟に対応するスケーラブルなソリューションへの投資が必要です。
プラスチックのリサイクルを確立させるには、プロクター・アンド・ギャンブルやコカ・コーラのような大企業による技術開発、投資、変革に頼る部分が大きいです。しかし一方で、政府、投資家、消費者は、企業がそれぞれの役割を果たし、成果を出すように圧力をかけ続けなければなりません。
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