なぜ、コストコ最新店舗に「3800万円」の商品が? 単なる“客寄せパンダ”ではない理由栃木に初進出(1/4 ページ)

» 2022年07月28日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]

 コストコが栃木県に初出店しました。オープン前からSNS上でも話題になり、6月23日のオープン日にはあふれんばかりのお客さんが詰めかけました。私の知る限り、日本に出店したコストコの中でも、もっとも集客に成功している店ではないかと思います。

 そのコストコ壬生(みぶ)倉庫店では、どのような新しい取り組みを始めているのでしょうか。2030年に日本で60店舗展開を目指すコストコの新戦略を小売り・サービス業のコンサルティングを30年間続けてきたムガマエ株式会社代表の岩崎剛幸が分析していきます。

コストコ壬生倉庫店

壬生倉庫店はコストコの中でも“特別な店”

 6月下旬、北関東自動車道壬生インターチェンジから車で5分の立地にコストコ壬生倉庫店がオープンしました。同店には朝からお客さんが殺到し、初日は午前5時40分に開店を早めました。本来は午前8時オープンですから異例の対応です。2日目も午前5時に店を開けていました。

 オープン前にお客さんが並んで開店を1時間早めたということはよくありますが、午前5時に店を開けたという話は聞いたことがありません。店の外に人が並び、熱中症で倒れることを防ぐために、異例の対応をとったのではないかと思います。しかし、それにしても、栃木の人々がコストコ出店をどれだけ待ちわびていたのかを実感しました。

 壬生倉庫店の出店で、日本国内のコストコの倉庫店舗数は31店となりました。

 コストコ日本支社長のケン・テリオ氏は「栃木県に倉庫店をオープンするにあたって、数年前から壬生町に足を運んできた」と発言しています。その発言通り、オープン数日間は店内で来店客にトイレットペーパーを配ってまわるパフォーマンスをするなど、積極的に同店に関わっています。それだけ期待しているということでしょう。

 コストコは出店立地に特徴のある、立地戦略に非常に優れた企業です。

 一見、人の住んでいない田舎や工場地帯などに出店するため、「ここで成り立つのか?」と思ってしまいます。しかし、実際には下記のような条件をクリアできる立地を冷静に選んでいます。

コストコの出店条件(出所:筆者作成)

 コストコは通常、「人口50万人都市から10キロ圏内」への出店を狙います。壬生倉庫店の北には人口51万人の宇都宮市が、南には人口17万人の小山市、16万人の栃木市があります。壬生倉庫店は実に70万人の商圏人口をとれるのです。

 高速道路を使えばさらに福島、茨城、埼玉まで商圏を延ばせます。インターから車で5分という好立地に出店したこともあり、これまでのコストコの中でもかなり広域集客が可能な倉庫店になりそうです。

 また、壬生周辺は都心へのアクセスの良さから大手企業が多数の工場を進出させていますから、法人需要も見込めます。同時に宇都宮や小山に住む富裕層を引き付けることも可能です。この点で壬生倉庫店はコストコの既存倉庫店以上に売り上げの期待できる店といえるのです。

 オープン前に目標にしていた事前会員登録者数を、オープン日にはすでに大きく上回ったことからも、壬生倉庫店の可能性を感じさせます。

 このような点から、コストコ壬生倉庫店は、同社にとって“特別な店”といえるのです。

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