コストコのローコスト経営を支えている柱が、同社の会員制です。これは1983年のシアトル1号店から始まったものです。もともと小売り・サービス事業者向けの卸売りからスタートしていますから、法人、個人両方の会員制度を当初より持っていました。
コストコの企業哲学は「常に経費を節約し、その分を会員の皆さまに還元していこう」という、大変シンプルなものです。ですから会員にとってはいつでも安心して利用できる店として認知されています。
コストコ会員になるには年会費を支払う必要があります。日本では法人会員で4235円、個人会員では4840円をそれぞれ毎年支払う必要があります。最近では法人向けにエグゼクティブビジネスカード、個人向けにエグゼクティブゴールドスターカードを用意しています。
年間購入金額の高いヘビーユーザー向けに、ポイント還元率を高めたカードです(いずれも年会費9900円)。このような施策によって世界で会員数を増やし続けています。21年度は全世界で1億1160万人となりました。なんと、会費収入だけで年間5350億円。一会員当りの売り上げは24万2278円、前年度比111.1%です。
この会員売り上げを大きく引き上げているのが、エグゼクティブ会員を中心にした宝飾品や家具など、高額商品です。
こうした背景もあり、壬生倉庫店では今後のテストケースとして、高額品の品ぞろえを増やしてオープンしたのです。単なる客寄せパンダではなく、今後、世界中のコストコで、チャンスがあれば売ろうとしている高額商品の新ラインアップなのです。
コストコの直近での売上高伸び率を見ると、22年8月期の第3クオーター実績は、前年同期比で14.8%の伸び率です。もともとの市場予想を上回る伸びです。ネット販売も2桁増を続けています。
1店舗当たりの売り上げも上昇を続け、21年度は326億円と店舗効率も非常に高まっています。しかし、同社の数字を見ると、21年秋頃からコロナ特需の影響が落ち着き始めて、成長率が鈍化している傾向も見えています。特に米国、カナダ以外の欧州や日本、アジアの売り上げの伸びが8.3%と伸び悩んでいます(22年8月期第3四半期データ)。
そこで、今後も成長を続けるためのキードライバーとして、法人や個人のエグゼクティブ層、いわゆる富裕層の利用頻度を上げ、高単価商材を購入してもらうことで売り上げの安定を図ろうとしているのです。もちろん数百万円の商品が一気に売れることはないでしょうが、オンラインを活用することで世界中のエグゼクティブ会員層にアピールすることが可能です。
また、富裕層を背景に持つ質の高い商圏に出店することで、潜在的な富裕層を新規会員として囲い込むことも可能となります。
壬生倉庫店の隣地には、カインズ壬生店がコストコの1週間前にオープンしています。10年にカインズなどを展開するベイシアグループの開発したパワーモール前橋南にコストコを誘致して以来、千葉ニュータウン、木更津などで両社は隣接オープンしています。これはベイシアグループの店舗が少量・高頻度利用であるのに対し、コストコは大量・低頻度利用店舗という店舗特性の違いから、お互いに相乗効果が見込めると判断し、同一立地に出店しているのです。このような強い企業同士の緩やかな連携も、新規客獲得という点で効果的といえるでしょう。
【2022年7月29日午後4時、一部表記を修正しました】
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