ここまでの内容を踏まえると「らぁ麺 飯田商店」のラーメンが1600円、つけ麺が2000円でも成立することも納得できるのではないでしょうか。
店舗が立地するのは神奈川県湯河原町と観光の名所です。客層のほとんどが地元在住の層ではないことは優に想定されますし、観光のついでに特別な体験を求めるのなら、普段食べるラーメン一杯に対する考え方や財布の大きさも異なり、2000円でも安く感じる人は多いのではないでしょうか。
これは余談になりますが、飯田商店は値上げを失敗しない工夫もしっかりとなされていました。それは原材料高騰を値上げの直接的な理由としないことです。店主の飯田将太氏は、このようにSNSで告知しています。
「理由は原材料の価格高騰ではなく、未来のラーメンの事を自分なりに考え出した答えです」(原文ママ)
意外に思えるかもしれませんが、ほとんどの顧客にとって商品の原価率が何%なのかはまるで興味がありません。「決められた予算の範囲内で、満足のいく商品とサービスを受けられるのかどうか」こそが、最重要かつ最大の関心事です。
単に原材料の高騰を理由とした値上げで炎上する事例を見かけますが、多くの場合、顧客の視点を無視して(やむを得ない理由とはいえ)一方的に値上げをしたという構図が反感の原因です。
飯田商店は「未来のラーメンの事」というワードを使うことで、サービスに対する期待感と金額の妥当感を醸成することに成功したといえるでしょう。
実際、SNS上では「そんなラーメンを食べてみたい」「逆に気になる」といったポジティブなコメントが多く目立ちました。このように企業の都合ではなく、顧客にとってメリットがある値上げにできるかは重要なポイントです。
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