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国内初! 公道をフルリモートで走る配送ロボ、安全面はどう対応? パナソニック担当者を直撃ロボットが共生する未来【前編】(2/3 ページ)

» 2022年08月08日 06時30分 公開
[太田祐一ITmedia]

どのような過程で道路使用許可を取得した?

 日本初となるフルリモート型の道路使用許可、パナソニックはどのような過程で取得したのだろうか。東島部長は「20年11月に実証実験を開始してから、段階的にできることを増やしていった結果、今回の許可につながった。警察、国土交通省などと密に連携をとってきました」と語る。

自動配送ロボ パナソニックホールディングス テクノロジー本部デジタル・AI技術センター モビリティソリューション部の東島勝義部長

 20年11月当初は、遠隔オペレーター1人に対し、ロボット1台の運行からスタートした。その後、ロボットの台数を徐々に増やし、2021年8月に現在のオペレーター1人で4台を監視する体制となった。当時は、ロボット1台につき保安要員も1人付いていた。

 ロボットと保安要員の距離は最初5メートル以内だったが、21年8月に10メートル以上まで広げた。そうして段階的に安全運行を心がけた結果、今回の許可につながったという。走行実績も1200キロを超えている。

 「警察も保安要員なしのフルリモート型は今まで前例がないので、どちらかというと私たちからよく提案をしていました。『次はロボットを増やします、今度は保安要員との距離を5メートルから10メートルにします』と。その都度、警察に安全性を確認してもらっていました」(東島部長)

気になる安全面は?

 保安要員なしの運用で気になるのはロボットの安全性だ。安全性を担保するため、実証運行中はロボットに搭載したカメラとセンサーからデータを抽出。その中から重大な事故につながる恐れのある“ヒヤリハット”の場面をデータベース化して分析した。その結果、課題が見えてきたという。

 「Fujisawa SSTは、信号機のない横断歩道が多くあります。ほかにも、子育て世代が多く住んでいるので、子どもの飛び出しも多く、路上におもちゃなども落ちています。狭小道路も多いので、すれ違う時に不安を与えないようにしないといけない。また、車・バイクに加え自転車に乗っている人も多いといった課題が見えてきました。

 今までは遠隔監視をしながら、保安要員が対処することが多かったのですが、フルリモートの場合はオペレーターとロボット自身で対処しなければならない。そのため、それらの課題に対して一つ一つ潰しながら安全性を高めていきました」(東島部長)

自動配送ロボ ロボットのカメラとセンサーで“ヒヤリハット”のデータを毎日抽出。なお、赤いボタンは非常停止ボタンとなっている。

 例えば、子どもや自転車などが近づいてくるとAIが検知してロボットは自動で止まり、狭い道路で人とすれ違う際などに危ないと感じた場合は、オペレーター側で操作して止めるなど、時と場合に応じて対応した。

 また、横断歩道を渡っている最中に、危険を察知したり通信が途絶えたりすると、ロボットは自動で止まってしまう。そうなると自動車との衝突事故の危険性があるため、AIが自動で判断し、安全な場所まで移動してから止まるように学習させた。

 ロボットには安全制御ユニットも搭載している。これは、機械類の安全性に関する国際規格「IEC 62061」に基づいて安全性を評価し、適合証明書が発行されている。急に人が飛び出してきても緊急停止ができる。また、Fujisawa SSTの拠点から自転車で駆け付ける体制も敷いているという。

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