リテール大革命

IT駆使して人気だった「ブルースターバーガー」なぜ閉店? プロが指摘する「接客不要」の落とし穴長浜淳之介のトレンドアンテナ(7/7 ページ)

» 2022年08月16日 10時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6|7       

その歴史的意義とは

 テーブルチェックやChompyのような、ITを活用して外食を支援する企業が登場した今日では、個人店でもやり方次第でDXが可能になってきた。ブルースターバーガーはその流れを示唆した点で、歴史的意義があった。

 谷口氏によれば、オンライン予約システム導入により24時間予約受付が可能となった。その効果として、閑散期のケーキの注文数が1.5倍になったパティスリー(神戸市「ラヴニュー」)や、ランチタイムの集客が2回転から3回転に上がった予約制豚カツ店(大阪市「とんかつ乃ぐち」)もあるという。

 電話がつながらずに取りこぼしていた顧客を、オンライン予約で拾えている。しかも、予約電話からの解放で店員が料理や接客に専念できる、働き方改革につながっているかが重要。ブルースターバーガーが残念だったのは、効率優先のため店員の労働が調理ロボット化し、顧客との接点もできず、疎外が進んだことだ。

 しかし、ブルースターバーガーは、まだ郊外のドライブスルーを試していなかった。また、どの店も家賃が高い駅前の一等地に店を構えていたが、テークアウトが中心ならば二等、三等立地で良かったのではないかとの疑点がある。キャッシュレス決済に慣れた外国人には受けたはずで、インバウンドが本格的に再開されていれば、結果は違っただろう。

 商品の評判は上々だったのだから、何度も上陸と撤退を繰り返してようやく軌道に乗った「バーガーキング」や「ウェンディーズ」のように、諦めず再チャレンジしてほしい。

ブルースターバーガー立川北口店は臨時休業からそのまま閉店
ブルースターバーガー立川北口店(出所:プレスリリース)
ブルースターバーガー神戸元町店(出所:プレスリリース)
人気の2×2ダブルチーズバーガー(出所:プレスリリース)
レモネード150円(創業時)(出所:プレスリリース)
HAGANオーガニックコーヒー(出所:プレスリリース)

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


前のページへ 1|2|3|4|5|6|7       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.