なぜ現場で働く人が不足しているのか 「コロナのせい」ではないワケスピン経済の歩き方(6/7 ページ)

» 2022年08月16日 11時12分 公開
[窪田順生ITmedia]

何十年も「根性」で乗り切ってきた

 なぜそうなったのかというと、「第7波」で新しい外国人労働者が日本国内に入って来るのが難しくなったことに加えて、これまで「働く人が足りない問題」を覆い隠してきた「根性論」も通用しなくなったからだ。

 この2年間ですっかり忘れているだろうが、ちょっと前まで日本人の多くは、インフルエンザにかかってもゴホゴホやりながら満員電車に乗って、オフィスで働き、「ちょっと風邪気味で」なんて言い訳しながら向かいのデスクの人に飛沫感染させていた。

 裏を返せば、日本社会が「ちょっとくらいの風邪で休めるか」「38度くらいならバファリン飲んでやり過ごせる」というブラック労働がまん延していたことの証だ。

2020年2月に行った調査によると、「体調が悪くても出社したことがある」人は8割(出典:ワークポート)

 こういうご時世になったので、われわれ日本人は「熱がある人は何日間が仕事を休む」というルールを守っているが、それまではこんなことをしている人間は「同僚に迷惑をかけた」「使えないやつ」「社会人としての自覚があるのか」なんて組織内でマイナス評価をされた。

 季節性インフルエンザも毎年すさまじい数の人々が感染して、高齢者や子どもの場合は肺炎をこじらせて死に至ることもある。そんな恐ろしい感染症をわれわれはこれまで何十年も「根性」で乗り切ってきたのである。

 この2年で、そのような「根性論」が通用しなくなった。だから、それまで誤魔化すことができていた「働く人が足りない問題」が表面化しただけの話だ。

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