常温で100日保存できる“おにぎり”誕生 どうやって開発したの? 担当者に聞いてみた3分インタビュー(2/3 ページ)

» 2022年08月20日 07時00分 公開
[上間貴大ITmedia]

――どのようなきっかけで、両社がコラボすることになったのですか?

中村: ちょうど1年ほど前に、京都府亀岡市で開催されたハンバーグカレーコンテストの審査員として、石井食品の石井社長とご一緒したのがきっかけでした。

 雑談で「将来、日持ちがしてタンパク質が担保できる商品を作りたいんですよね〜」と話していたところ、石井社長が「それ、ウチでできますよ」と声をかけてくださって、その日のうちに話がまとまりました。

 その時は漠然としたイメージしか持っておらず、何となく「お肉の佃煮」のようなものを想定していました。ただ、後日届いた石井食品さんの商品サンプルの中にあった「4年間保存できるおかゆ」を見て、無添加のおかゆが4年持つのなら、おにぎりでもいけるのでは? と思い相談を始めました。

おにぎり (提供:石井食品)

――トントン拍子で話が進んだのですね。ところで、技術的には問題なかったのでしょうか?

坂本: ものすごく大変でした(笑)。実は、長期保存させるためのレトルト処理に至る前の段階でも苦労したんです……。

中村: 炊き込みご飯をイメージしてほしいのですが、タンパク質の含有量を増やすためにはお肉をたくさん入れる必要があります。どうしてもタンパク質量10グラムは保持したかったので、具材の量が多く、機械が止まってしまったりうまく炊き上がらなかったりという問題が発生しました。おにぎりをつくる時点で3カ月ぐらいは時間がかかりました。

 で、やっとレシピが完成して「レトルト処理をしたらOKや!」と次の工程に移ったら、今度は「味が違うぞ……」と(笑)。

坂本: 長期保存するためには、高温で食品を長時間加熱する処理を施します。ただ、その過程でどうしても味が変わってしまい、レトルト独特の風味が出てしまいます。

――確かにレトルトカレーも、独特の味やにおいがありますね。

坂本: おにぎりの場合は、その風味がダイレクトに出てしまいます。その風味をわれわれの技術や配合で抑え、佰食屋さんの味に近づける工夫をしています。

 いい配合ができたと思っても、処理を加えたら「あれ、コショウの味が強くなったな」とか、「引き立たせたい味が消えている?」と、何度も調味料の配合や設定温度の調整を繰り返しました。試作品も100個は作ったと思います。

おにぎり レトルトには独特の香りが(画像はイメージ)

中村: 本当は21年12月に発売するのが目標でした。遅れたのは何度も試作を繰り返したからなんです。

――そもそも企画がスタートして約半年での発売は、期間が短い気がするのですが、食品業界では当たり前の期間なのですか?

池田: 食品業界はもともと商品開発のスパンが短くて、約1年をかけた今回の商品は当社の中でもトップ3に入るほどの長さだと思います。

坂本: あと、こんなに試作を繰り返したのも恐らくナンバーワンだと思います(笑)。

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