御殿場と酒々井のアウトレットで、なぜ「ヘリ」を飛ばしているのか週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2022年08月21日 08時21分 公開
[土肥義則ITmedia]

アウトレットで「ヘリ」を飛ばす理由

 それにしても、なぜアウトレットでヘリを飛ばそうと思ったのだろうか。先ほど紹介したように、1つは「集客手段」である。もう1つは「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて、である。

 三菱地所、日本航空、兼松の3社が都内で「空飛ぶクルマ」を使って、さまざまな実験を行うことが決まった。スケジュールを見ると、今年は都内で空飛ぶクルマが離着陸できる場所などを決めなければいけない。来年はヘリポートを2カ所設置して、そこからヘリを飛ばさなければいけない。再来年には空飛ぶクルマを飛ばさなければいけない。

空飛ぶクルマを活用したプロジェクト

 このような話を聞くと、「えっ、2年後には都内で空飛ぶクルマで移動できるの? ムリムリムリ」と思われたかもしれないが、関係者はそのように考えていない。2025年の大阪・関西万博では、来場客を輸送するといった話もでているので、実用化は秒読み段階に入っているのだ。

 とはいえ、いきなり六本木や渋谷などの上空をクルマが飛んでいたら、ちょっとした混乱が起きるかもしれない。「危ない、危ない!」「落ちるのでは? 怖い、怖い!」といった不安の声がでてくるはず。というわけで、その前にヘリを飛ばして、大都会の空を飛んでも大丈夫だと感じてもらう。新しいことを始めるにあたって、まずは畑を見つけて、土を耕すような作業をする、というわけだ。

 ここで、話をアウトレットに戻す。御殿場と酒々井でヘリを飛ばしているのは、都会で土を耕す前に、地方で試してみようという話なのである。試し方にもいろいろあるが、まずは移動ではなく、遊覧だけにした。「アウトレット×遊覧=エンタメ要素を強く」して、空を飛ぶことを「身近」に感じてもらうことにしたのだ。

空を飛ぶことを「身近」に感じてもらう

 「遊覧を優先することは理解できる。でも移動できるコースがあってもよいのでは。御殿場から箱根に行きたい人もいるでしょ」と思われたかもしれないが、確かにそれもアリである。しかし、事業の継続性を考えると、ちょっと難しい。例えば、A→Bのルートを設定した場合、B→Aに乗る人も確保したい。でなければ、“空気”を運ぶことになるからだ。しかし、遊覧であれば、A→Aなので、復路のことは気にしなくてよい。

 というわけで、いまは「空を飛んでみたい」人がそれほどいないので、A→Aになるわけだが、来年の計画を見ると、A→Bと書かれているではないか。採算のことを考えると、今年は難しいのに、来年になったら大丈夫というのもおかしな話である。

 では、どういったことを考えているのかというと、日中はA→Aを飛んで、夜はB→Bを想定している。夜の便を飛ばすために、A→Bに移動しなければいけないので、そのときにお客を乗せるといった考えだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.