本記事は、東芝テックCVCのnote「さまざまなアプローチから学ぶ、店舗でのロボット活用」「アフターコロナも継続利用?小売店舗のサービスとは」をITmedia ビジネスオンライン編集部で一部加筆・編集の上、転載したものです。
小売企業では人手不足や業務効率化、顧客体験向上などを目的にさまざまなテクノロジーが導入されていますが、メディアにも頻繁に取り上げられる話題の一つとして、「店舗でのロボット活用」があります。
海外のスーパーマーケットでは接客ロボットや在庫管理ロボット、巡回監視ロボットなどが次々に登場し、国内でも店でロボットを目にする機会は少しずつ増えているように感じます。
これから、日本の小売店舗でロボット活用が増える可能性はあるのでしょうか? 小売業のDXを支援する「店舗のICT活用研究所」代表の郡司昇氏に、現状と今後の動向をお聞きしました。
――米ウォルマートは2017年ごろからロボット製造スタートアップのBossa Nova Roboticsと協業し、店舗の在庫管理ロボット導入を進めてきました。これはロボットが店内を移動しながら商品棚をスキャンし、在庫切れや価格間違いなどの検出、売れ行きの予測や顧客ニーズの把握を実現するロボットで、実際に500近くの店舗で活用されていたようです。しかし、コロナ禍でオンライン注文が急増したことにより、この在庫管理ロボットの利用を中止したという報道が出ていました。郡司さんはこの流れをどのように読み解きますか?
郡司氏: 前回お話ししたように、BOPIS(Buy Online Pick-up In Store:ECで購入した商品を店舗で受け取る仕組み)が増えたのが大きな要因だと思っています。米国の場合はBOPISの中でも、店舗の駐車場で商品を受け取るカーブサイドピックアップが主流だと思いますが、その注文が増えれば、当然ピックアップするスタッフも増やす必要があります。コロナ禍にウォルマートを訪れた知人の話では、20〜30人のスタッフが店内で常に商品をピックアップしていたそうです。
それだけ店内にスタッフがいる状態だと、棚の欠品状況を常に把握できるようになるので、わざわざロボットを使用する必要がありません。しかも店舗内のロボットは安全性を確実に保てるようにセンサーを設定しているので、基本的に動きが遅く、人が近づく度に止まってしまいます。そうなると、ピックアップする人にとっては邪魔な存在ですよね。
――例えばBOPISの注文が急増して人の手では追いつかなくなったら、ピッキングロボットのような存在が活躍する可能性もあるのでしょうか?
郡司氏: それだけ需要が大きいのであれば、ロボットにピックアップを任せようという発想になると思いますが、その場合は店内ではなくマイクロフルフィルメントセンター(小型の配送センター)のようなロボット活用に最適化されたピックアップ専用の倉庫を作るほうが効率的です。その意味で、在庫管理ロボットではなく、今後ロボットが新しい形で活用される可能性はあると思います。ロボットが扱いにくい生鮮食品などの商品については、人がピックアップするといった切り分けになるのではないでしょうか。
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