Next Generation

30年横ばい……日本人の給与アップ阻む「労使間の格差」 収入増へ個人ができる5つの方法とは?企業と働き手のWin-Winな関係へ(1/4 ページ)

» 2022年08月22日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2022年6月の1人当たり現金給与総額の平均は45万2695円で、前年同月比で2.2%増えたものの、物価上昇の影響を加味した実質賃金では、同0.4%減少しました。実質賃金の減少は3カ月連続です。

 また、内閣官房が新しい資本主義実現会議の中で提出した資料によると、1991年の実質賃金を100とした場合の日本の伸び率は、28年後の2019年で105とほぼ横ばい。ドイツ・フランス134、アメリカ141、イギリス148と海外では大きく伸びていることを考えると、30年近く横ばい状態にある日本の賃金事情は特殊に映ります。

 しかしながら、働き手個人からの視点では、社会に出て会社に勤めた後の賃金は年数とともにどんどん上がっていきます。厚生労働省の21年賃金構造基本統計調査より、全産業の所定内給与額を年齢区分に応じてグラフにしたものが以下です。

年齢区分別にみた所定内給与額(厚生労働省の21年賃金構造基本統計調査より)

 賃金全体の平均値で推移を見れば30年近くほぼ横ばいだったとしても、年功賃金の影響により、個人単位で見れば年齢が上がるとともに自動的に賃金は上昇を続けていくのです。個々の働き手からすれば毎年賃金が上昇しているわけですから、実質賃金の平均値が長年横ばいを続けていることを実感し辛い面があります。

 そのため、もし心の奥底に賃金をもっと上げたいという思いがあったとしても、多くの働き手の中には毎年徐々に上がってはいるという感覚が生じている分、交渉して賃金上昇を求めようとする気持ちは緩和されがちです。

従来の賃上げ交渉では限界がある

 賃金を上昇させるための交渉には、大きく3つのパターンがあります。

 1つは、全国や地域、産業別といった大きな単位で一律に賃金交渉する方法です。欧州では産業別の労働組合が活発に活動していますが、日本では企業別が主流になっています。地域や産業といった大きな単位で行われる賃金交渉として機能していると言えるのは、公益、労働者、使用者、これら三者の代表が委員となって審議会で議論を行う最低賃金審議会です。直近では全国加重平均で31円という過去最大の引き上げ額とすることが決まりました。

画像はイメージ(ゲッティイメージズ、以下同)

 2つ目は、各企業単位での賃金交渉です。こちらは企業別の労働組合が春闘などの機会に都度議論を行っています。連合(日本労働組合総連合会)によると、22年春闘では平均賃上げ率2.07%を獲得しました。

 3つ目のパターンは、個別交渉です。多くの会社では、年1回以上は給与査定や個別面談などが行われます。それらの機会や別途場を作ってもらうことにより、働き手が個別に賃上げを働きかけます。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.