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30年横ばい……日本人の給与アップ阻む「労使間の格差」 収入増へ個人ができる5つの方法とは?企業と働き手のWin-Winな関係へ(2/4 ページ)

» 2022年08月22日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 しかし、これら3つのパターンにはそれぞれ課題があります。地域や産業という大きな括りで交渉が行われている最低賃金ですが、直接影響を受けるのは最低賃金ラインで働く一部の働き手に限られます。また、影響を受ける層には扶養枠内で働く主婦も多いため、年末近くになると勤務を減らして扶養枠の年収上限に収め、結局年収は変わらないということも起こりえます。

 春闘などの企業単位での交渉は毎年着実に賃上げにつながっている印象はあるものの、物価上昇はそれ以上の勢いで進んでいるため、実質賃金が下がってしまっているのは冒頭で指摘した通りです。

画像はイメージ

 個別交渉については、雇う側の会社と雇われる側の働き手とでは立場に差があるため、働き手からはなかなか言い出しづらいというのが実情です。個別交渉を行うには、むしろ入社後より入社前の方がやりやすい印象があります。

 賃上げ交渉においては、欧州に比べると見劣りすると言われる最低賃金のさらなるアップや産業別労働組合の影響力をもっと高めるなど、大きな単位での仕組み改善について検討することは課題の一つです。しかし、利害関係者が多いため調整は一筋縄にはいきません。その点、企業単位の施策であれば比較的小回りが利きます。

サイバーエージェント初任給42万円の衝撃

 7月25日に日本経済新聞が「サイバーエージェント、初任給42万円 IT以外も2割増」と題した記事を報じるなど、サイバーエージェントが23年度の新卒社員の初任給を42万円にするというニュースは各メディアによってセンセーショナルに伝えられました。

 少子化が進む中で新卒社員は母数自体が著しく減少しているため、採用する会社側からすると年々獲得競争が激しくなってきています。新卒採用を優位に進めていくためには、余程強いインパクトを与えられる施策でなければなりません。その点、初任給42万は効果が期待できそうなインパクトがある反面、実施するのはとても勇気のいる施策です。

 賃金は会社から見るとコストです。同業他社より抜きん出て高い賃金を提示するということは、それだけコストが増えるリスクを背負うことを意味します。特に新卒社員となると、入社してしばらくは戦力として計算するのが難しい層です。極力即戦力としての活躍が期待できる人材を採用したとしても、ある程度は会社が育てることも視野に入れる必要があります。また、戦力として十分育ったころに退職してしまうことも考えられます。

 思い切った初任給設定は、自社の基準に沿う人材を採用しさえすればそれ以上の成果が出せるという算段があるからこそ打てる施策です。それは、人件費をコストではなく投資と見なしているということでもあります。

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