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氷河期支援、正規30万人増めざす→実績は3万人 国の施策が機能しない根本的な矛盾とは?日本の雇用課題にメスを(1/4 ページ)

» 2022年06月15日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

 総務省が5月末に発表した4月分の労働力調査によると、2022年4月の失業率は2.5%。低水準が続いています。同年同月の有効求人倍率は、コロナ禍前より大きく下がっているものの1.23倍とこちらも堅調に推移しています。しかしながら、正社員と呼ばれる働き方の有効求人倍率に限ると0.97倍。コロナ禍前の19年12月からの推移は、以下グラフの通りです。

コロナ禍以降、正社員の求人数は求職者の数より少ない状態が続く(厚生労働省の資料をもとに筆者作成)

 20年3月までは辛うじて有効求人倍率が1.0倍を上回っていましたが、それ以降は下回った状態が続いています。つまり正社員に絞った場合、コロナ禍以降の求人数は求職者の数より少ない状態が続いていることになります。

 22年5月12日、時事通信は「正規30万人増、24年度までに 氷河期支援、2年延長―政府」と題した記事を報じました。政府は、20〜22年度の3年間で就職氷河期世代の正社員数を30万人増やす目標を掲げていましたが、コロナ禍による雇用環境の悪化が原因で実質的な増加は3万人に留まり、期限を2年延長するとのことです。

 正社員有効求人倍率の推移を見る限り、確かにコロナ禍で厳しい状況にあると思います。しかしながら、3年計画のうち2年が終了しても、目標数の10分の1に留まるというのはあまりに少なすぎます。もちろん、政府が何も対策を講じてこなかった訳ではありません。行動計画にもとづき、19年からさまざまな施策を走らせてきました。

 就職氷河期世代とは、93〜04年の間に新卒で社会に出た年代を指します。内閣府の「日本経済2019−2020」によると、この年代における大学卒業者の就職率は平年よりも10%ポイント以上も低く、高校卒業者も7%ポイント以上低くなっています。

就職氷河期世代の就職率は大学卒業者で平年よりも10%ポイント以上も低く、高校卒業者も7%ポイント以上低い(出典:内閣府「日本経済2019−2020」の「第2節 働き方の変化と就業機会」より引用

 この年代が就職活動している際にすでに就職氷河期は問題視されていましたが、その頃は主に就活が厳しいという指摘でした。しかし、就職氷河期の影響期間は社会人としてのスタートを切る時だけに留まるものではありません。今では新卒時の就職が職業キャリアの形成に長く影響を与えることにもフォーカスされ、社会問題として認識されていることの意義は大きいと言えます。

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