また、そもそも就職氷河期世代に限定して正社員数を増やすこと自体が矛盾をはらんでいます。政府が19年6月に発表した『経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2019』には、「就職氷河期世代支援プログラム」の支援対象者について以下のように記載されています。
「支援対象としては、正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者(少なくとも50万人)、就業を希望しながら、さまざまな事情により求職活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など、100万人程度と見込む」
整理すると、以下が就職氷河期世代の支援対象者として想定されている人たちです。
これらの人たちには支援が必要だと思いますが、必ずしも就職氷河期世代に限った課題ではありません。就職氷河期世代以外も含めた、全世代に共通する課題です。
仮に1人枠の正社員求人があり、最終選考に残った2人が上記の支援対象者に該当し、かつ就職氷河期世代と就職氷河期以外の世代だった場合、会社はどちらを採用すればよいのでしょうか。もし就職氷河期世代だからという理由でそちらを優先して採用した場合、就職氷河期以外の世代の求職者の雇用機会は奪われることになります。では、就職氷河期世代か否かは考慮せずに選考を行った場合、就職氷河期世代を支援するという名目は意味をなさなくなります。
つまり、就職氷河期世代“だけ”の正社員数を増やすという目標自体が、自己矛盾しているということです。骨太方針2019で示されている「就職氷河期世代支援プログラム」の支援対象者は、就職氷河期世代に限らず遍く支援されなければなりません。
先ほど挙げた、正社員数30万人増という目標に対する3点の疑問も含めると、就職氷河期世代が抱えている課題は、就職氷河期世代だけに特化して対策を打っても効果は見込めないことが見えてきます。取り組むべきは、日本の雇用労働環境を取り巻く根本的な課題に向き合い、以下2つの観点からグランドデザインを描き直すことです。
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