「さようなら」は英語で、“good bye”である。しかし、ウェンディーズは「またね」の“see you”と言っていたのかもしれない。
撤退してから、2年後に再上陸する。日本に「ドミノ・ピザ」を持ち込んで、宅配ピザを広げたアーネスト比嘉さんがトップに立ち、表参道に再出店したのだ。ダイエーがダメで、ゼンショーもサジを投げたわけだが、ドミノ・ピザを大きくした人であればなんとかしてくれるかもしれない。周囲からの期待も大きく、高級路線で攻めていくことに。
しかし、である。期待されたほど店舗数は伸びず、表参道の店は撤退し、残されたのは1店舗のみ。大手チェーンとの差を縮めるどころか、広がるばかり。いや、日本で“3度目の失敗”という文字が迫っていたのである。
比嘉さんに当時のことを聞いたところ、このような答えが返ってきた。「ピザは宅配が中心になるので、店の立地はそれほど難しくはない。しかし、ハンバーガーチェーンは集客のことを考えると、駅前などの一等地に店を構えなければいけない。また、人材も確保しなければいけない。この2つの問題を解決することは難しく、店舗数を増やすことができなかった」と。
土俵際に追い詰められていたので、周囲からは「今度こそ“good bye”だな」と思われていたようだが、比嘉さんはここで“ウルトラC”を考え、それを実行したのだ。ウェンディーズはたった1店舗だが、136店舗を展開するファーストキッチンを飲み込めばなんとかなるかもしれない――と。
15年3月、ウェンディーズとファーストキッチンのコラボ店を六本木に出店した。外食チェーンがお互いのブランドを共同で運営するケースは、世界的にも珍しい。店舗の外観だけではなく、メニューの良いところを組み合わせていった。ウェンディーズはハンバーガー、ファーストキッチンはパスタとデザートといった形である。メニューはバラエティに富んだモノをそろえることができたものの、誰もやったことがない試みである。結果がどうなるのかよく分からないまま始めたところ、店の売り上げは前年比の1.5倍に。
しかし、この数字はたまたまかもしれないし、できすぎかもしれない。外国人や流行に敏感な人が多い六本木に店を構えたことが影響しているのかもしれないと考え、同年8月に上野浅草口店をオープンした。客層は大きく違っていたわけだが、こちらも想定以上の結果になったのだ。
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