月利8%? 激増する怪しい投資話、金融教育は対策となるか金融ディスラプション(3/3 ページ)

» 2022年09月06日 07時15分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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すべての世代に金融教育が重要

 個々人の対策も必要なことだが、業界としてはこの状況にどう対処すればいいのだろうか。投資への関心が高まるのは良いことだが、詐欺の増加は投資意欲を萎ませることにもつながる。

 「規制を作ってもいたちごっこな気がしている。悪いやつは抜け道を見つけていってしまう。ユーザーの金融教育は重要度が上がっていくだろう」(堀江氏)

 金融庁は国家戦略として、すべての世代を対象に金融教育を推進していくことが必要だと提言する方針だ。投資家個人個人が金融リテラシーを身に着けて、判断できるようになるしか、詐欺への対策法はない。

 4月からは、高校の家庭科で金融教育の授業も始まった。とはいえ、家庭科教師自身の金融リテラシーが高いというわけでもなく、生徒と一緒に学びながらというのが実情だという。金融広報中央委員会が公表している「金融リテラシー調査 2019年」によると、日本人の金融リテラシーは、世界各国と比較しても低い。

金融リテラシーを、OECD三カ国の上位10カ国と比べると、インフレ、分散投資、お金への注意について、日本が見劣りすることが分かる。金融広報中央委員会が行った金融リテラシー調査(2022年)より

 こうした背景の元で、証券会社もIFA事業者も運用会社も金融教育に力を入れている。しかし、金融業者による教育は、投資商品を売るがためのものだと思われがちという難しさもある。証券会社が行う投資教育であれば、経済や銘柄の分析方法などが中心になる傾向があり、それは暗に最終的に自社で株式を売買してほしいという思いが入ってしまう。だから「販売と教育はかなり意識的に分けないと、ユーザーが話を聞いてくれない」と堀江氏は言う。

 一方で、販売を全く意図しない金融教育も難しい。それはあくまでCSRの範囲内の活動となり、掛けられるコストや継続性に課題があるからだ。

 仮想通貨やファンド化商品など次々と新しいものが生まれる投資商品。そして、今や投資は一部の人のものではなく、誰もが気にするものとなってきた。急速な状況の変化に対し、投資教育はやっと始まったばかり。「資産所得倍増計画」の実現には、業界の制度だけでなく、ユーザーの地道な金融リテラシーの向上も不可欠だということを、忘れてはならないだろう。

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