フィンテック企業からみた、新しい信用情報機関のあり方とは?(3/5 ページ)

» 2022年09月28日 13時00分 公開
[矢部寿明ITmedia]

(3):個人に信用情報の主権がない

 指定信用情報機関は、先の通り個人の信用情報を保管しているわけですが、このデータの所有権は実はデータの当人ではなく、指定信用情報機関にあります。そのため、仮に自分自身の信用情報を知りたいと思った時、手数料として1000円を指定信用情報機関へ支払う必要があるのが現状です。

 また、審査の際に金融事業者が取得した信用情報を、当該事業者などから個人が教えてもらうこともできません。なぜなら、銀行などの金融事業者が指定信用情報機関から取り寄せた信用情報を個人へ開示することは第三者への開示にあたり、各信用情報機関のポリシーで禁止されているからです。逆も然りで、個人が取り寄せたデータを銀行などの組織へ共有することも推奨されていません。

 このような“信用情報の所有権が本人になく、確認や管理が自由にできない”という日本の現状は、グローバルな個人情報にかかわるトレンドと完全に逆行しています。

(4):金融ライセンスを持った事業者しかデータにアクセスできない

 法律の面でも課題があります。指定信用情報機関から個人の与信データの取得を依頼できるのは、指定信用情報機関へ加盟している金融事業者のみというルールがあります。加盟事業者になるには、貸金業や割賦販売法などのライセンスを保有していることが前提のため、金融事業者以外の個人の与信を本来的に利活用したい事業者は、その取得を実現できていません。

 C2Cの取引や、レンタル、あるいは不動産取引など、本質的にはより多様な場面で個人に対する与信は行われていますが、これらの事業体では肝心な信用情報を活用することができない状況になっているのです。

(5):指定信用情報機関は新しく作れない

 では、個人信用情報を管理・運用する組織、いわゆる信用情報機関のようなものを、現代のニーズに合わせた形で新しく作れるかというと、それもハードルが高いのです。現在、指定信用情報機関として以下2つの組織があります。JICCとCICです。

CICのWebページ

 この2社は「株式会社」であり、信用情報機関として他の会社が参入することは理屈上可能なはずです。しかし、貸金業法や割賦販売法の中でそれぞれ規定されているように、内閣総理大臣からの指定を受けた「指定」信用情報機関になるためには5兆円以上の債権情報を有しているなど、条件は非常に厳しく、このような要件を満たす企業がこの後新しく生まれることは不可能に近いといっていい現状です。

 では、これらの現状や課題をふまえ、今後消費者信用市場にはどのような変革が必要なのでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.