フィンテック企業からみた、新しい信用情報機関のあり方とは?(5/5 ページ)

» 2022年09月28日 13時00分 公開
[矢部寿明ITmedia]
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新しい信用情報機関を生み出す

 最後に、私たちCrezitがこの市場に対してどのように関われるかをお伝えしたいと思います。

 前述したグランドラインはありつつも、私たちは新しい信用情報機関を生み出すことが、日本のフィンテック発展の近道であると考えています。私たちのようなデジタルベースの信用情報機関ができれば、事業者へはもちろん、消費者にとって、より利便性の高い金融サービスを、今よりも早いスピード感で提供できるでしょう。

 私たちの考える信用情報機関では、個人が自分の信用情報を正しく取得、把握、確認できる環境を作り、さらに管理、向上することができる仕組みを実現したいと考えています。こうした概念はクレジットスコアと呼ばれ、米国ではすでに浸透しています。クレジットビルディングといって、信用を高めていければ、金利も安くなっていく。そのためのツールも存在しているのです。

 日本は金融教育が遅れているといわれますが、日本のフィンテックを阻害する要因が、そのまま個人・社会へも影響しているのではないでしょうか。そもそも自分の信用情報に主権がなく、確認する方法もなく、自身の信用情報に向き合う文化がないのです。もし、何らかの理由で一度ブラックリストに入ってしまったとしても、確認するすべを知らなかったり、確認できたとしてもデータの主権がないので、なすすべがなかったりという状況にあり、そのことで生活機会を損なう可能性まであります。このような不均衡な金融の世界をCrezitは変えていきたいと考えています。

 一国の金融制度へチャレンジするには、技術的な課題、時間的な問題もあり、さらに細々とした法規制などへも対応しなければなりません。決して簡単な道のりではありませんが、引き続きサービス開発へ注力していきたいと思います。

筆者:矢部寿明 Crezit Holdings代表取締役CEO

1993年生まれ。大学卒業後、GE(ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)に入社。ファイナンスのリーダー育成プログラムであるFMPに所属し、北アジア3ヶ国のファイナンス業務などに従事。2018年3月より、BASEへ入社。子会社BASE BANKの立ち上げ、将来債権譲渡のスキームを活用した「YELL BANK」の企画・開発や融資事業の立ち上げなどを行なう。2019年2月退社し、Crezitを創業。慶應義塾大学卒。

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