プラチナバンドを3社から5MHz×2ずつ割譲する楽天モバイルの案について、既存3社はみな否定している。当然、3社にとっても800M/900MHz帯はエリアカバレッジを確保するための重要な周波数帯だ。
ドコモは、保有する800MHz帯を仮に楽天モバイルに5MHz幅を渡して、帯域が15MHz幅から10MHz幅に減った場合、最大通信速度は約3分の2へ、また、1つの基地局セル内に収容可能なユーザ数も約3分の2に減少すると見ている。その対策として、他の周波数帯の基地局を増設し、その減少分を補う必要があるとする。
また、3社とも楽天モバイルにプラチナバンドを5MHz幅ずつ割り当てた場合、隣り合った帯域を使用する同社の電波の干渉を防ぐために、基地局にフィルターを挿入することが必要だと主張している。例えばKDDIは、フィルターを挿入をしない場合、約20%のユーザーの音声通話がつながりにくくなり、音途切れが発生するとしている。しかし、楽天モバイルは「国際的な基準で見てもフィルターは必要ない」という意見だ。このフィルターについては、既存事業者が実際の設備を使って検証も行っている最中だ。
さらに、携帯電話各社は、電波の届きにくい地域や室内の通信を確保するために、電波を増幅するレピータという装置を飲食店やオフィス、一般家庭などに設置している。既存3社は、周波数の帯域幅が変わることで新たなレピーターへの交換が必要とし、その交換作業に早い場合にも2年程度、長くなると5年から10年程度かかるとしている。そしてもちろん、多額の費用がかかる。最も多いのはKDDIで、合わせて250億円以上の費用がかかると試算している。
こうした費用に関しては、新たな免許人、ここでは楽天モバイルが、既存免許人(大手3社)の費用を負担することにより、基地局設置の前倒しを行うことができる「終了促進措置」という仕組みがある。3社はフィルターの挿入やレピーターの交換費用は基本的に新規免許人が負担すべきとの立場だが、楽天モバイルは、開設指針制定の申出をして1年以内にプラチナバンドの利用を開始したいとしながら「終了促進措置は活用しない」、つまり費用負担はしないと発言している。
楽天モバイル社長の矢澤俊介氏は第10回会合で、「3社は(プラチナバンドの活用ですでに)大きな利益を上げている。いわゆる既得権益の世界に入ってきていると思う。この状況で赤字の楽天モバイルに対して費用負担を求めるのは、制度的にも全くおかしな話で1ミリも納得できるものではない」と強い口調で費用負担に反対していた。
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