プラチナバンドを譲渡せよ、ただし費用は負担しない 楽天モバイル巡る見えない着地点房野麻子の「モバイルチェック」(1/3 ページ)

» 2022年09月16日 16時25分 公開
[房野麻子ITmedia]

 楽天モバイルが免許取得を求める800M/900MHz帯のプラチナバンド。しかし、既存免許人である大手3キャリアと楽天モバイルで考え方の乖離(かいり)が大きく、どこに妥協点を見出すかが注目されている。

プラチナバンドを求める楽天モバイル(写真は5月に新料金プランを発表した三木谷浩史会長)

楽天モバイルのプラチナバンド割り当てについて検討

 総務省は現在、「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」を設置。携帯電話用周波数の再割り当てを行う場合について、法律、情報技術、会計などの有識者が参加して検討が行われている。検討内容は、周波数再割り当ての進め方、再割り当てが行われた場合、現在その周波数を利用している事業者がサービスを停止し新たな利用者がサービスを開始するまでの移行期間、移行費用の負担の範囲などだ。

 2月の第1回会合以降、非公開で携帯電話事業者に対してヒアリングなどを行いながら、携帯電話用周波数の再割り当てにおける移行期間、移行費用の負担の範囲についての原則的な考え方、また、他社電波との干渉を防ぐために基地局に設置する受信フィルターの影響などについて検討してきた。受信フィルターについては、既存事業者による実機を用いた検証も実施中だ。

 8月30日開催の第10回会合からは内容が公開され、楽天モバイルから要望のあったプラチナバンドの再割り当てについて、事業者ヒアリングを行いながらさらなる検討を行っている。

 なお、先の通常国会において「電波監理審議会の機能強化」や「携帯電話等の周波数の再割当制度」を盛り込んだ「電波法及び放送法の一部を改正する法律」(改正電波法)が成立し、10月1日に施行されることが決定している。

 改正電波法が施行されると、電波監理審議会が電波の有効利用評価を行うなど、審議会の機能が強化されるとともに、携帯電話などの周波数再割当制度が創設され、携帯電話用周波数については、(1)「電波の有効利用の程度が一定の基準を満たさないとき」、(2)「開設指針制定の申出があったとき」、(3)「電波の公平かつ能率的な利用を確保するための周波数の再編が必要と認めるとき」の3つの場合に再割り当てができるようになる。

改正電波法により、携帯電話などの周波数再割当制度が創設され、図の下段3つのケースで再割当てができるようになる(第10回会合 総務省の資料より)

 楽天モバイルは、(2)の条件を活用し、プラチナバンドを有効利用できる事業者として選定されるよう願い出ている。700MHzから900MHzの帯域は大手3キャリアやMCA無線(業務無線システム)、RFIDなどで使われており空きがほとんどない状態だ。そこで楽天モバイルは、大手3社が3Gで利用している800M/900MHzの周波数帯を、上りと下りそれぞれ5MHz幅ずつ、各社から割譲してもらう案を提案している。

楽天モバイルは、3社のプラチナバンドから5MHz幅×2の帯域(ピンクの部分)の割譲を要望している(第10回会合 楽天モバイルの資料より)

 当初は既存の1社から15MHz×2の割譲を受けることを想定していたが、それでは既存事業者の周波数をすべて奪うことになり現実的とはいえない。一方、各社から5MHz×2ずつ割譲すれば、既存事業者もプラチナバンドを継続して利用できるので、負担、影響が少ないという考えだ。

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