約1500人のIT人材を抱え、そのうち1300人ほどをベトナムなどの海外エンジニアが占める──そんな異色の企業「Sun Asterisk」。企業のDXに携わり、事業のデジタル化を数多く手掛けてきた(参考:5年間でベトナム3位の人気企業に 1500人の多国籍IT集団はどのようにして生まれたのか)。そんな同社の小林泰平代表取締役がモデレーターとなり、有名企業のプロジェクト担当者と対談し、どのようにDXを実現したのかを探る。
今回のゲストは、『家庭の医学』で知られる保健同人社の寺田理恵子氏だ。
創業75年の歴史を持つ同社は、2022年4月、未病プラットフォーム「みんなの家庭の医学」をローンチした。これまでに培ってきた医療データをデジタルでつなぎ、アプリを通じて健康相談できる仕組みを構築するなど、75年のアセットをデジタルに再分配した形だ。
その裏では、同社の顔である『家庭の医学』をはじめ、真面目に積み重ねてきたものの時代とともに伸び悩んでいた出版事業を畳む決断があった。
これほどの決断をしたのは、同社が今回の施策を「第二創業」と位置付けたため。寺田氏は、取締役CDO(最高デジタル責任者)として、この改革に携わった。Sun Asterisk代表取締役小林泰平との対談を通じて、企業がデジタルで変わっていく過程を振り返る。
小林: 僕らの小さい頃といえば、一家に1冊は『家庭の医学』があったイメージです。出版のイメージが強い保健同人社がデジタルに取り組んだ背景は、どんなものだったんですか。
寺田: 保健同人社は、出版を中心とした事業に伸び悩んでいる状況が続いておりました。その背景には、社会的なデジタルシフトに加え、ユーザーが自分に合った個別最適なサービスをタイムリーに求めるようになってきており、出版物ではそのニーズに応えきれなくなってきたことが大きかったと分析しています。
その中で、20年4月に三井物産が株主となりました。私も三井物産から出向で来た一人です。そしてこのときを同社の「第二創業」と位置付け、大胆な経営改革を行いました。その構想の中心にあったのがデジタルです。
小林: それから2年で「みんなの家庭の医学」をローンチしたわけですよね。私たちも関わらせていただきましたが、歴史ある企業ほど、新しいことに会社一丸で取り組むのは簡単ではないはず。それが理由でDXが進まない企業も多いと思うのですが、なぜ変われたのですか。
寺田: 経営が覚悟を持って「もう後戻りはしない」という姿勢を示したことが大きかったと思います。やはり最初は、“様子見”していた社員も少なくなかったと思います。デジタル化の話は過去にありながら、進まなかった経緯もあります。「きっと今回も」と思っていた社員も少なからずいたでしょう。
その中で象徴的だったのは、祖業の出版事業を畳む決断をしたことです。また、財務面の整理なども行い、一から経営を見直しました。その狙いは、これから行うデジタル投資の原資を捻出することでした。これら一連の決断を見て、社員に少しずつ本気度が伝わり、変革への熱が高まっていったのだと思います。
小林: そこまでやると、社員の方にも覚悟が伝わりますよね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング