もちろん中村さんのやり方が、全ての企業に通用するとは限らないかもしれません。ましてや、ついて歩く余裕など今の“昭和の上司”にはないかもしれません。
でも、自分のために謝ってくれる人がいる、自分を信頼してくれる人がいる、自分を真剣に育てようとしてくれる人がいる──そう部下が感じることができれば、仕事が部下の「境界内」に入る大きなきっかけになります。
実際、部下がいい顔をして働いてる企業では、仕事の最初から最後までを“現場”で経験できる仕組みを、会社が考えて実践していました。
たった1回でもいいから、部下が自分で考え抜いたことでうまくいった経験を持てれば、その部下はどんなにしんどくても考え抜けるようになる。たった1回でいいから、「やった!」と実感する経験を味わえば、「境界」の中に「仕事」が入るようになる。
令和だろうと、いつの時代だろうと、部下が「仕事が面白い!」と思えるような、現場の訓練が必要で、そのためには上司の“汗”が必要不可欠です。
「部下への声がけ」や「部下を動かす言葉」に頼るのではなく、「自分のために謝ってくれる人がいる、自分を信頼してくれる人がいる、自分を真剣に育てようとしてくれる人がいる」と令和の部下が感じることを、小さなことからでいいからやってみる。
部下を指導するより、伴走者になることが大切なのです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。
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