クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

経団連モビリティ委員会発足の裏読み池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2022年09月26日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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政・産がきちんと意思疎通できる関係になるために

 日本の自動車産業は、この動きを捉え損ない、対応が後手に回った。おそらくはその反省が、自動車業界の態度を変える動きにつながったのだと思う。政治と距離を置くのではなく、政・産がきちんと意思疎通できる関係になるためには、自動車関係5団体では力不足だ。そのためにこそ、経団連のモビリティ委員会は必要だということになったのだと思う。

 結果論として、コロナ禍とウクライナ問題を経験した今になって振り返れば、オール再生可能エネルギーとBEVオンリー政策は脆(もろ)かったことが白日の下に晒された。COP25で小泉氏を吊し上げ、散々上からエラそうなことを言い募っていた欧州はエネルギー価格の暴騰に苦しみ、石炭でもなんでも燃やして発電量を確保する事態に至っている。次回は是非自らに化石賞を贈呈していただきたいものである。

 軍事の世界では「バトルプルーフ」という言葉がある。どんなに優秀なスペックを持った兵器でも、実践で使われていないものは信用されない。「戦いの現場でその実力が証明」されてこその兵器である。そういう意味でいえば、オール再生可能エネルギーもBEVオンリー政策も、バトルでプルーフされなかった。長年かつ多方面にわたって、そういうことを実地で経験してきた自動車産業が、マルチソリューションを提唱するには理由があったのである。

 モビリティ委員会はまだ発足したばかり。すべてはこれからだが、菅内閣当時の苦い経験を元に、世界で戦える日本経済の最先端としての自動車産業を守り、日本経済を発展させる役割を担う重要な位置づけを持っているのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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