ファンが地方鉄道を支援、今後はサブスクも? 鉄道系クラファンの新潮流杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2022年10月07日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 鉄道分野のクラウドファンディングが大型化している。

 大井川鐵道が2022年9月20日から1億円のクラウドファンディングを開始した。資金の用途は蒸気機関車、C56形135号機の完全修復だ。兵庫県加東市の公園で朽ちかけていた機関車を譲り受けて、本線を走らせるまで復元する。修理費用の概算見積は約3億円。その一部を鉄道ファンに応援してもらう。クラウドファンディングサイトは「READYFOR」だ。

 1億円といってもREADYFORの手数料が引かれるから「手取り」は減る。READYFORの手数料は専任担当がつく「フルサポートプラン」が17%+消費税、メールサポートのみの「シンプルプラン」が12%+消費税。ただし比類なき大型案件のため、手数料非公開の「フルサポートプラス」になるだろう。支援メニューを見ると返礼品の原価の平均は2割くらいか。大井川鐵道が手にする現金は7500万円前後になると思われる。

大井川鐵道が、鉄道分野で最高額のクラウドファンディングを始めた(出典:READYFOR、蒸気機関車に再び命を、昭和の汽笛を次世代へ:大鉄100周年企画

 総費用3億円に対して7500万円は、金額が小さい気がする。2億円のクラウドファンディングで1億5000万円。やっと半額に近づく。だからクラウドファンディングの戦略としては「早期に達成して、セカンドゴールとして2億円を目指す」だろう。READYFORの手数料も倍になる。プロモーション費用をかけてモトは取れる。

動態化復元予定の蒸気機関車と大井川鐵道の鈴木肇社長

 クラウドファンディングサイトは純粋に手数料を稼ぎたい。内容に対する思いはなくても、成功すれば発起人の目標達成につながる。経済学の父、アダム・スミスの国富論「見えざる手」そのものだ。ただし、READYFORは早期から鉄道文化遺産案件に注目しており、社内に専門のプロジェクトチームを持っている。起案に対して審査が厳しいようだけれども、それだけに良い企画に絞られ成功率は高い。支援者も安心できる。

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