ファンが地方鉄道を支援、今後はサブスクも? 鉄道系クラファンの新潮流杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2022年10月07日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 あれから7年が過ぎて、鉄道系クラウドファンディングは定着し、支援金額も増えている。READYFORにおける総額1000万円以上のプロジェクトを抜粋してみた。

  • 16年3月28日、「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」が始めた「解体の危機にある27年間愛された寝台列車「北斗星」を守りたい!」は目標金額1000万円に対して、837人から1588万5000円を集めた。

  • 18年9月25日、「還暦の赤プロジェクト」が始めた「もう一度、“初代1000形”が見たい。京急の代名詞を当時のカラーへ」は目標金額1500万円に対し、770人から1605万1000円を集めている。「還暦の赤プロジェクト」は20年5月3日に再度「コロナに挑む地方私鉄を応援!ことでん"情熱の赤プロジェクト"」を実施。目標金額850万円に対して、548人から1357万1000円を集めた。

  • 21年3月30日、阪堺電気軌道が始めた「百寿まであと7年。『モ161号』動態保存にむけて大規模修繕工事を」は目標金額748万円に対し、878人の支援者から1398万7000円を集めた。

  • 21年8月21日、嶋田悟志氏(PYC)が始めた「27年間北斗星食堂車両として活躍し続けたグランシャリオを守りたい!」は目標額700万円に対し、1077万円を617人から集めた。PYCはケアサービスを展開する企業で、食堂車を購入しレストランとしている。クラウドファンディングは修繕費用の支援を募った。

  • 21年9月1日、北条鉄道が始めた「北条鉄道の挑戦。引退したキハ40気動車をもう一度走らせよう。」は目標金額300万円に対し、924人の支援者から1302万円を集めた。想定の4倍で締めくくった。

  • 22年8月10日、野岩鉄道が始めた「野岩鉄道に唯一残る6050型。36年走り続けた車両を改修し、後世へ」は目標金額1500万円に対し1912万8000円が集まっている。このプロジェクトは本稿執筆時点で2300万円のネクストゴールへチャレンジ中だ。

  • 22年8月16日、水島臨海鉄道が始めた「旧国鉄キハ205を保存し、キハ37、38との連結を!」は目標額1300万円に対し、2366万5000円を1339人から集めた。

 少額からスタートして、結果的に1000万円超となるプロジェクトが出てきたことで、始めから1000万円超を目指すプロジェクトも立ち上がった。野岩鉄道の1500万円、水島臨海鉄道の1300万円は開始時から話題になった。

 近年の傾向として、鉄道事業者が自ら開始するプロジェクトが増えている。廃車保存だけではなく、動いている車両の修繕が増えていることも注目したい。前出の食堂車修繕も、車両自体は静態保存だけれども、食堂としては現役だ。

 鉄道事業者が実施し、動態保存を目指す。その傾向の先に、大井川鐵道の蒸気機関車復活プロジェクトがある。1億円は目標金額として1桁も飛躍した形だけれども、READYFORは世界遺産法隆寺のプロジェクトで目標金額2000万円に対して、7456人から1億5700万円を集めた実績がある。それだけの支援会員がいるという背景も効いている。

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法隆寺は、7456人から1億5700万円を集めた。クラウドファンディング開始日はくしくもJR東海「いざいざ奈良」キャンペーンと同じ日(出典:READYFOR)

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