“九州の覇者”コスモス薬品に、ウエルシアが真っ向勝負 ドラッグストア戦争の行方は?小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)

» 2022年10月24日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

戦国時代のごとく、M&Aによる拡大を繰り返してきた

 ドラッグストア業界の上位企業は、これまで出店により売り上げを増やしつつも、M&Aによって規模拡大してきたという側面が大きい

 図表2は、1位ウエルシアと2位ツルハの13年以降の主なM&A案件とその時点の相手先の売り上げを列記したものだが、その単純合計額はウエルシア3078億円、ツルハが2826億円となる。ということは、M&Aなしでは両社コスモスに既に並ばれていた可能性が高く、M&Aなしではいつか追い抜かれる、ということになる。

図表2、ウエルシアHD・ツルハHDのIR資料より筆者作成

コスモス薬品はなぜ強い?

コスモス薬品(画像はWebサイトより)

 コスモスは食品強化型ドラッグストアの筆頭であり、生鮮を除く食品を低価格で販売することで集客し、ドラッグ商材である薬粧をついで買いさせるビジネスモデルで最も成功している企業といえる。

 売り上げに占める食品の割合は6割を超えるのだが、そこでは収益を稼ごうとはせず、安売りに徹し、残る4割弱の薬粧で収益を確保する。物流効率などランニングコストを抑えるコスト構造を確立しているため、それでも十分な収益を稼ぐ。

 進出地域の地場ドラッグストアの売り上げに大きな脅威となってきたことに加え、店が増えてくると地場食品スーパーの売り上げにもダメージを与えるため、中四国などではコスモスの増殖がきっかけで、ドラッグストア、スーパーの両方で再編が起きたといわれている。

 西の端、九州にその地盤を築いており、そこから物流網を整えると隣接する地域に進出する。いまやその店舗網は中部、関東に達し、前線で大量の新店を投入して店舗網を築いている。また、地盤九州や第2地盤となった中四国にも手を抜かず、着実にドミナント密度を上げ続ける。

 さらに厄介なのは、安定的な収益基盤を築いた九州を確保しているコスモスに対して、大手競合は近畿、中部、関東という人口密集地の争奪戦を行っているため、本拠地がそのまま激戦地となってしまっている。ドラッグ大手にとって、コスモスの本拠地はたたきたいが、物流効率も悪く、主戦場でもない九州には本格的攻勢を掛けづらかった(図表3)。

図表3、各社Webサイト、決算説明資料、有価証券報告書より筆者作成

 一方、コスモスは九州で安定的に確保した収益を、東進するための投資資金に回して、競合大手の本拠地を攻略し続けることが可能だったのである(図表4)。

図表4、コスモス薬品IR資料より筆者作成

 イオンウエルシア九州は、イオン九州のインフラを活用して、コスモスの本拠地九州に楔(くさび)を打ち込むための戦略を担っているのだ。

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