実際、イオンウエルシア九州が展開する「生鮮フード&調剤ドラッグ」の新業態は食品スーパーと調剤付ドラッグストアの機能をワンストップで提供できるという優れものであり、有機的に融合できるのであれば、生鮮や調剤のないコスモスにとっても、かなり脅威となる可能性がある。
21年大規模小売店舗立地法の大型店(1000平方メートル以上)新設届け出件数(675件)のうち、コスモスは135件(小売業界ダントツ1位)を申請するほどの勢いで、新店を増やしている。この多くが関東、中部へ投入されており、ウエルシア、ツルハなどとも激突中だ。イオンのこの九州攻略作戦が奏功すれば、最終局面を迎えつつあるドラッグストアの覇権争いの行方にも大きな影響を及ぼす可能性がある。
少し話は変わるが、九州には生活必需品をワンストップで品ぞろえしたチェーンがもともと数多く存在する。こうした小売りチェーンは基本的に、食品や家庭用消耗品をディスカウント販売することで集客して、各社の得意とする商材を収益商材として、ついで買いさせるというコスモスの原型のような構造を持っている。
「なぜ九州に多いのか」と言えば、かつて、スーパーやコンビニが3大都市圏に侵透したような時代(1970〜80年代あたり)、まだ大手チェーンがあまり浸透していない九州は格好のアウトレットエリアだったらしいのだ。売れ残り商品や賞味期限が近くなって出荷出来ない商品を問屋などが売りさばくためには、大都市から離れていて、大手チェーンの縄張りでなく、その割には1000万人以上人口がいる九州は、在庫処分するためにディスカウント販売するのに格好な場所だったという。
そうした背景から、九州にはディスカウント販売を取り入れた生活必需品をワンストップ、かつショートタイムに買い物できるタイプのチェーンがさまざまあって、それぞれ活躍している(図表5)。
また、忙しい働く女性の多さとその機動力となる軽自動車の普及も、生活必需品ワンストップ&ショートタイム型の店を産み出した要因の一つであると考えられる。
働きながら家に帰ると家事を中心的に担っている女性にとって、日々の買物に使う店の要件とは、(1)勤務先からの帰りの動線上にあって、(2)一カ所で全ての必需品が買えて、(3)短時間で済ませられる、ということになる。
図表は、都道県別に女性有職者割合とその機動力となる軽自動車の一人あたりの保有台数を示したもの。東北の一部、北陸、山陰、九州がそうした環境にあることが分かると思うが、実は北陸にも、こうした生活必需品ワンストップ&ショートタイム型企業が発祥して力強く成長している。
クスリのアオキ(石川県、売上3283億円)、ゲンキー(福井県、売上1545億円)はドラッグストアから、こうした業態に発展させた企業であり、中部から東日本方面に向けて拡大を続けている。九州はこうした社会環境に加えて、前述の「アウトレット」の歴史があり、多くの企業を育んだのかもしれない。
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