「田園都市線」は多くの人が嫌っているのに、なぜ“ブランド力”を手にできたのかスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2022年10月25日 10時20分 公開
[窪田順生ITmedia]

勘違いしている人も

 ……という話をしても、首都圏以外にお住みの方からすれば、「なんのこっちゃ?」という反応だと思うので、基本的なところから説明しよう。

 田園都市線というのは東急電鉄という東京・神奈川で主に展開している私鉄の路線のことだ。渋谷を起点に神奈川県大和市の中央林間にまで伸びており、駅には首都圏では「おしゃれタウン」として知られる「二子玉川」や、80年代に社会現象にもなった不倫ドラマ『金曜日の妻たちへ』の舞台となった新興住宅地があることで知られる、「たまプラーザ」や「つくし野」がある。

 そんな田園都市線、実は数年前から首都圏で、一部のアンチから蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われていた。

 特に誰かに迷惑をかけたわけではないのだが、田園都市沿線住民のやることなすこと鼻につくという人が一定数いるようでボロカスに叩かれている。有名人に例えるなら、料理の写真をアップしただけなのに「盛り付けがひどい」などと叩かれて、炎上してしまう辻希美さんとよく似た感じだ。

 では、田園都市線の一体どのあたりが一部の人々を不快にしているのか。2016年に出版された、有名路線の格付けをした『沿線格差』(SB新書)から引用させていただこう。

 『「にわかセレブ」感が否めない東急(特に田園都市線)沿線民も出てきている。深夜の某人気番組でも、田園都市線沿いの人が「洗練されて素敵な街ですよ♪」と鼻持ちならない感じでインタビューに答え、出演者の怒りを買うという光景もよく見られる』(P180)

人気の「二子玉川」(出典:東急)

 ここまで言われると、さすがにヘコんできたという田園都市線沿線の方も多いだろうが、実はこれはそれほど悪いことではない。ここまでアンチの人がいるというのは、それだけブランド力があることの裏返しでもあるからだ。

 さらに言えば、中流階級の人が分相応に「セレブ」だと勘違いして「にわか」になってしまっているとしたら、それは自分が住んでいる街の“セレブ感”に引っ張られているから、という見方もできる。要するに、住民の実力以上に、沿線のブランド力のほうが高くなってしまったことで、自分のステータスまで上がったと勘違いをしてしまっているのだ。

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