では、そんな田園都市線のブランド力の根源は何か。いろいろな意見があるだろうが、東急グループ創業者・五島慶太氏が掲げた「沿線の住民には、ゆりかごから墓場まで徹底的に世話を焼く」という都市開発の理念を愚直に守り続けているところではないかと思っている。
東急沿線、特に田園都市線にお住まいの方からよく聞くのは、日常生活のすべてが「東急」で事足りてしまうという点だ。
朝起きて通勤や通学は東急電鉄を使い、帰宅して食料品を購入するには東急ストアというスーパーがあって、東急カードを使えば特典がある。休日に食事やショッピングを楽しもうと思えば、二子玉川や自由が丘、たまプラーザの商業施設へ行けばいいし、アウトレットに行きたくなれば、南町田グランベリーパークへ行けばいい。
また、ネットなどのインフラに関しては、「イッツコム」というCATVや光回線の東急系企業があるし、子育て世代には「キッズベースキャンプ」という東急が経営する学童保育がある。
防犯が気になれば、「東急セキュリティ」がある。子どもが大きくなって家が手狭になれば、東急系のレンタル収納事業「クラモ」があって、引っ越しや建て替え・リフォームをする場合は「東急リバブル」がある。高齢者になったら、介護付有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅やデイサービス事業を展開する「東急ウェルネス」がある。
さらに、田園都市線に多い「ベッドタウン」の課題である「人口減少」の対応も進めている。例えば、たまプラーザでは、19年に国内でいち早く「郊外型MaaS」(Mobility as a Service)の実証実験をしている。これは利用者の目的に応じて、バスなどの最適な乗り物がスマホなどで検索・予約・決済できるような移動サービスだ。
鉄道と都市開発を中心に「ゆりかごから墓場まで徹底的に世話を焼く」を進めることで、住民の「囲い込み」を実現しているのだ。
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