弊社ではプライスMDを企業に導入する際に、下記のようなプライス設定表をもとに価格戦略を考えています。ファストフードなどの外食企業で、主にランチ注文比率の高い定番商品を中心に従来価格と値上げ価格の比較表を作成してみました。すると、興味深い内容が分かりました。
プライス設定表の一番左はお客さんの持つ予算帯です。お客さんはこの予算帯を軸にして商品を購入します。その右側が予算帯を代表する主要価格帯、そして価格帯をさらに二分した価格レンジがあります。また、それぞれの設定プライス例(代表的な店頭設定価格)と分類されています。
あくまでも「お客さんの持つ予算帯」を中心に企業の価格設定を考えるために作成した価格設定のフォーマットです。
各社の主力商品の値上げ率は、サイゼリヤの1.00倍(値上げしていない)から1.17倍(ミスド)までバラついていますが、各社ともに高い値上げ率ではありません。値上げ率という点では、各社ともに客離れを起こさない値上げになっているともいえます。
しかし、予算帯と価格帯に注目してみると、違いがでてきます。
まず、各社の中心にしようとしている価格帯はどこでしょうか。各社の主力商品の価格は300〜500円の予算帯に集中しています。Webメディア「Spicomi」(運営:UOCC)の調査によると、22年の会社員のランチ代平均金額は300〜500円と500〜700円が比率的に多いことが分かります。ビジネスパーソンにとってランチ価格は、できればワンコインである500円前後で済ませたいというのが一般的な感覚でしょう。
東京・丸の内周辺のランチ価格は1000円前後で、大都市圏でのランチ価格は上昇しています。ただ、全国的に見れば500円前後がランチの平均的な金額といえます。
この平均的なランチの予算帯500円を頭に入れて、次の吉野家、マクドナルドの値上げの実態を見てみます。
例えば吉野家の場合、牛丼並盛の店内価格は426円から448円への値上げです。価格は上がっていますが、同じ価格レンジ(400〜500円未満)内での価格変化です。また、牛皿定食並盛の店内価格は602円から624円に上がっています。これも同じ価格レンジ内での値上げです。予算帯の点ではいずれも500円予算の範囲内ですから大きな問題はありません。値上げはしているものの、支払い予算的に大きくは変わっていません。この範囲の値上げならば心理的影響はほとんどないといえます。
マクドナルドは単品でみると、ハンバーガーは100円予算帯の範囲での値上げですが、ビッグマックは300円予算から500円予算に上がっています。ビッグマックセットは、ひるまックは変わらず600円のまま。レギュラー時間帯(午前10:30〜)のビッグマックセットは690円から710円に上がっています。ひるまックは同社にとっては稼ぎ時の商品なので値上げには慎重になったのでしょう。しかし、レギュラーでは700円台に突入しています。予算帯は変わりませんが、500円予算帯では一番上の700〜800円の価格レンジに入ります。これによってランチ以外での客数に影響が出てくる可能性があります。値上がりとしては20円ほどのわずかな金額です。しかし、この20円がお客さんの購入率を下げる可能性もあるのです。
海外に比べて日本のビッグマックはまだ安い(22年10月時点で米国・ニューヨークのビッグマックは7.39ドル=およそ1071円)といわれています。そのビッグマックが日本でも徐々に値上がりしてきているので、今後は同社の客数に影響を与えるかもしれません。
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